ハインリッヒの法則というのをご存じでしょうか。重大事故が起きる前には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常がある、というものです。僕はバイク乗りで毎週必ず愛車を走らせていますが、一度でもヒヤリとしたら必ず引き返すようにしています。ハインリッヒの法則に基づいて言えば、一度のヒヤリは重大事故への300分の1(1/300)であるからです。
逆に言えばヒヤリを軽んじることがなければ、危険を遠ざけることができる、ということです。

ハインリッヒの法則(ハインリッヒのほうそく、Heinrich's law)は、労働災害における経験則の一つである。1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというもの。「ハインリッヒの災害トライアングル定理」または「傷害四角錐」とも呼ばれる。

小さなミスに潜む重大事故へのリスクを常に感じること

全ての物事には前兆があります。
事業をしていても、良い流れや悪い流れがあって、その流れをうまく察して、流れを掴んでいく。
流れというものは変化するので、同じ流れに常にしがみつくのは厳禁。流れに流されるのではなく、その流れにうまく乗ることが肝心です。流れが悪くなれば、そこからすぐに離れて別の流れに乗る。良い流れがこなければ、来るまでじっと待つ。それが重要なんです。

流れが良くなったり悪くなったりするときには、必ず潮目があります。その潮目こそ前兆であり、その前兆を見極めて行動することが大事なわけです。

僕は昔(商社時代に)取引先の会社(台湾の企業)が倒産して、代金を回収できなかったことがあります。金額的には大したことがなかったのですが、商売において代金回収ができないというのは、事業上最悪のことです。

実際には僕がその取引先を引き継いだのは、回収できなかった代金の対象となる取引が成立したあとだったので、本来は責任を感じる必要はなかったのですが、その頃の僕は自分を強く責めました。もう少し注意深かったら、相手の事業がうまく行っていないことを察することができていたなら、こんなことは起きていなかったはずなのに、と。

もちろん他国の企業の異常を感じ取るべきは、その国の駐在員であるので、単にその客を引き継いだばかりの僕に何かできたことがあったかどうかはわからない。けれど、悪い予兆は、その客に直接関係のないところにもあったかもしれない。ハインリッヒの法則がいう、”一つの重大事故の影に隠れている29の軽微な事故、そしてその背景に潜む300の異常”は、全てが同一線上にある連鎖したものではありません。

つまり、台湾企業の倒産(=債権回収不能)とは関係のない、全く異なるシチュエーションでの事故や事件があったとしたら、もしくはより小さなミスや失敗やトラブルがあったとしたら、それらを逆算して、より重大な問題の発生の可能性に目を向けることができたかもしれないのです。

それがハインリッヒの法則を有効に使う、ということです。
些細な問題が発生したら(それ自体は本当に大したことがないコトだとしても)、より注意深くなって、自分が関わるすべてのプロジェクトや業務全体を見渡すべきなんです。ヒヤリとしたならば、それが300分の1の重大事故であり、次のヒヤリがそのまま重大事故になる可能性があるということに気づくべきなんです。

一つ一つは大したことがないからといって無視したりせず、そこに潜む、より重大で深刻な問題に繋がるかもしれないリスクを感じ取る。それが大切なことです。

流れを掴み、運を引き寄せるために、変化の兆しに敏感であること

割れ窓理論(Broken Windows Theory)は聞いたことがありますよね。

軽微な犯罪も徹底的に取り締まることで、凶悪犯罪を含めた犯罪を抑止できるとする環境犯罪学上の理論。アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した。「建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される」との考え方からこの名がある。

これもある意味でハインリッヒの法則と同じことを言っています。割れ窓理論を逆に言えば、重大犯罪は軽微な犯罪を放置していることで起こりやすくなる、ということです。

ビジネスの場においても、ちょっとした問題(例えば取引先からの入金が期日を1日遅れた)を”大した問題じゃない”と片付ける人がいますが、経営者の身からすると怒り心頭モノです。
まず第一に代金回収が遅れる、というのはその日数分の金利を損しているということですから、軽微であっても会社に損害を与えているということを理解していないのは大問題。そして、それに加えて、軽微な問題だとたかをくくっていることは、すなわちより重大な事故に繋がっている(重大事故の1/300)ことがわかっていないことに、怒りを通り越して哀しささえ感じてしまいます。

危機一髪、というのは一生のうちになんどもあっていいものではない。何か問題が起きれば、それはより悪いことへの予兆であると考え、引くなり安全対策を講じるなり、とにかく備えをすることが大事です。
同時に、軽微な問題こそ放置しない態度だけが、重大事故を予防する唯一の道だと理解することが大切です。

厳しい時代を生き抜くために、事故を起こして周囲に迷惑をかけないために、常日頃から、何かヒヤリとすることが起きるたびに、「ハインリッヒの法則・・・」と小声で呟く習慣をつけることをオススメします。

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