毎月第3木曜日の夜に、THE FACTORYで行う少人数(原則定員10名)のワークショップ「Workshop@THE FACTORY」。2019年1月17日に開催された第24回Workshopのレポートをお届けします。
ゲスト講師はパーソナライゼーションソフトウェアを提供するシーセンス株式会社の代表取締役社長 江川亮一氏。テーマは『拡大するサブスクリプションモデルにおける顧客体験の向上策とは〜AIとダイナミックペイウォールが生み出す新たなデジタル施策について〜』です。

シーセンスについて

シーセンスは、2010年に設立され、2014年7月オスロ証券取引所に上場したノルウェーのベンチャー企業です。「創業メンバーは2008年にマイクロソフトに買収されたエンタープライズサーチエンジンのFast Search &Transfer出身者です」と語る江川さん。「本社はノルウェーの首都オスロ。従業員約160名を抱え、ヨーロッパや北アメリカ、アジアの主要12ヶ国5拠点にまたがるグローバル企業になりました」

シーセンスの事業は、SaaSによるサブスクリプションモデルでパーソナライゼーションソフトウェアを提供すること。主にメディア企業やEC事業者、その他銀行や通信事業者などのエンタープライズにサービスを提供、顧客数は世界で350社ほどだとのことです。

サブスクリプションビジネスの特徴

「本日のテーマであるサブスクリプションビジネスの特徴とは」江川さんは以下のようなものだと語ります。

  • 所有から利用へ
    物を所有することではなく、物を利用することで得られる体験が重視される時代に
  • 売り切りから継続課金へ
    利用開始時に製品代金を全額支払うのではなく、利用している間、定額の利用料金を支払い続ける
  • 対象商材の拡大
    コンテンツや耐久消費財、高額商品に限らず、食事や衣服などもサブスクリプションの対象に

そして「サブスクリプションビジネスにはユーザー側にも提供者側にも大きなメリットがあります」と江川さん。

ユーザー側提供側
初期費用を安く抑えられる。
常に最新のモノを利用できる。
初期導入のハードルを下げることで利用者を拡大
継続的な収益によって売上を安定させる
サブスクリプションビジネスのメリット
ジャンル事例
ニュースメディアウォール・ストリート・ジャーナル、日経電子版
映像Netflix、Hulu、Amazonプライムビデオ
音楽Spotify、Apple Music
書籍・雑誌Kindle Unlimited、楽天マガジン、dマガジン
自動車NOREL
小売・サービスカフェ、アパレル、ラーメン
製造業航空エンジン、タイヤ、建設機械、医療用画像診断装置
サブスクリプションビジネスの一例

サブスクリプションビジネスを成功させるには・・・江川さんは「匿名の段階から顧客それぞれに適したおもてなしを行い、コンバージョンにつなげることが重要」と指摘、さらにサブスクリプションビジネス最大の敵であるチャーン(=解約)を防止するために「解約の兆候を早期に見つけ、解約を思いとどまるような働きかけを行う」ことが大事だと述べました。

「サブスクビジネスには、接触初期から利用開始後までの一貫したパーソナライズとケアが重要なのです」

シーセンスのソリューション

「シーセンスには、デジタルサブスクリプションビジネスにおいて、オーディエンスのエンゲージメントの向上と収益化の促進のための、オールインワンソリューションがあります」と江川さん。

Cxense Conversion Engineがそれで、以下のようなアーキテクチャーを持つものだそうです。

  1. サイト内の行動履歴や1stパーティデータやCRMデータなど、異なる情報ソースからデータを収集、結合
  2. パーソナライズされた顧客体験とカスタマージャーニーを効果的に構築するために、オーディエンスプロファイルならびに、コンテンツプロファイルを作成
  3. プロペンシティモデルに基づいた機械学習を利用し、エンゲージメントとコンバージョンを促進

ウォール・ストリート・ジャーナルの導入効果事例

江川さんによれば、米国の一流メディア ウォール・ストリート・ジャーナルがこのCxense Conversion Engineを導入し、デジタルサブスクリプションの会員数を30%向上させたと言います。

WSJの取り組みの中でもっとも耳目を集めているのは、ダイナミックペイウォールと呼ばれる仕組みです。

そもそもペイウォールとは、以下のような定義を持ちます。

ペイウォールとは、Webサイトがコンテンツを一部有料化し、対価を支払ったユーザーのみアクセスできるようにすることである。 ペイウォールの方式を採用しているサービスの例として、一部の新聞社のオンラインメディアなどを挙げることができる。

シーセンスが提供し、ウォール・ストリート・ジャーナルが実装したダイナミックペイウォールとは、簡単に言うと読者によって異なるペイウォールを自在に設定できるというものだそうです。ペイウォールがダイナミック、つまり読者の嗜好や行動に応じて動的に変化して、会員登録をスムーズに促すのです。
ウォール・ストリート・ジャーナルの事例では、読者のタイプによって記事を全文表示したり、見出しのみを表示したり、関心が高そうな記事に関連したコンテンツへの誘導、非会員に対する記事下の登録誘導の効率アップのためのA/Bテストなど、さまざまな施策を採用しているとのことです。

会員登録をする前に読む記事の数というのは、読者一人一人によってかなり異なりますから、読者に合わせて読みたいであろうコンテンツの露出を増やしたり、すぐに登録してくれそうな読者には積極的に会員登録を勧めたりするなど、読者とコンテンツ条件を柔軟に組み合わせるような設定が求められます。これがダイナミック(動的)ではない従来のペイウォールでは、いちいちビジネスロジックの追加や、設定変更にエンジニアの工数や時間を割かなければならなくなり、非常に手間とコストがかかることになってしまいます。

デジタルメディアの多くは、広告収益だけに依存できず、有料課金会員を広く集める必要があり、サブスクビジネスへの関心は高まるばかりです。サードパーティ(第三者)のプラットフォームに依存しているのではなく、自分たちのメディアでサブスクにチャレンジすれば、直接読者のデータを収集することができるし、ユーザーとのエンゲージメントを高めることが可能です。

江川さんはそうしたメディアのみなさんのニーズに応え、マネタイズを促進するために、サブスクリプションを含むダイレクトなマーケティングにトライして欲しいと訴えました。

ユーザーから直接課金するサブスクによって新たな収益基盤をつくると同時に、サブスクリプションを通じて得たデータを元に、広告基盤をもつくりなおすことが可能だと江川さんは言います。
そして、そのことは、大切なユーザーにより良質な体験を還元するというポジティブフィードバックを生むことなのです。

画像: ウォール・ストリート・ジャーナルの導入効果事例
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