毎月第1・3木曜日の夜に、THE FACTORYで行う少人数(定員10名)のワークショップ「Workshop@THE FACTORY」。今回は、コンサルティング企業D4DRの藤元健太郎社長をお招きして、2017年3月16日に開催したWorkshop Vol.02の様子を簡単に紹介します。
今回のテーマは、「これからのオウンドメディア、キュレーションメディアのサービスモデルはどうあるべきか?」です。

藤元健太郎 / D4DR,Inc.
1993年からインターネットビジネスの研究を開始し、インターネット上のECやマーケティングなど各種ビジネスのコンサルティング、調査研究を進めている。マルチメディアグランプリ、オンラインショッピング大賞等の審査員。また各種コラムやレポートを執筆しており、主な書籍として「サイバー市場の可能性」生産性出版がある。

消費者のインターネットの使い方が変わったことによる、ネット業界の勢力図の変化と、自ら情報を発信すること(オウンドメディアを持つこと)の重要性

画像: 消費者のインターネットの使い方が変わったことによる、ネット業界の勢力図の変化と、自ら情報を発信すること(オウンドメディアを持つこと)の重要性

スマホファーストによる消費体験の変化

まず、藤元さんが強調したのは、PCからスマートフォン主体に変化したインターネットの使い方、いわゆるスマホファーストの台頭であらゆる動向が変わってきている、ということです。現代の消費者は、何か買いたいものを探すならばGoogleで検索して情報を取得するというよりも、スマホでAmazonのアプリを起動し、そこから直接欲しいものを探し出します。さらに、よい情報を、SNSを使って拡散します。その全てがスマホの上で行われるのです。

藤元さんは、スマホファーストのわかりやすい例として、さらにネットオークションの王者であったヤフオク!が、フリーマーケットサービス(略してフリマ)の「メルカリ」 の勢いを止められず、消費者同士のネット上での売買(C2C)の場における王者の座を明け渡しつつある、と語りました。最近のヤフオク!のCMを見れば、それがよくわかる、と藤元さんは指摘します。
CMの中で可愛らしい人形が「こら、ヤフオク!このフリマモードって何?すぐ買える物が探せる?それ、もうオークションじゃないよね」と怒ります。ヤフオク!が自慢のオークションサービスではなく、メルカリ同様のフリマを取り入れざるをえないことを伝える、かなり自嘲気味なCMです。
こんなCMを作らざるを得ないことが、ヤフオク!の焦りを示している、と藤元さんは語るのです。

画像: ヤフオク!TVCM フリマモード篇 出演:ブライス(Blythe) www.youtube.com

ヤフオク!TVCM フリマモード篇 出演:ブライス(Blythe)

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そしてSEO環境の変化。

さらに、藤元さんは、これまでインターネット広告業界の主戦場であったSEO(検索エンジン最適化)の業界に、大きな変化が起きていると言います。Googleの検索結果の上位を占めることで、ネットユーザーを自分たちのサイトに誘導することをSEOと呼ぶわけですが、ひと昔前であれば被リンク率の向上(自社サイトをリンクしてくれるサイトを増やすこと)が最重要テクニックであったものが、いまでは陳腐化してしまっています。Googleは被リンク率を重要視するのを止めて、コンテンツの良し悪しを解析して、検索結果に反映するようになってきているからです。

2016年末に世間を騒がせたWELQ問題(医療系キュレーションメディア WELQの記事の盗用問題や制作体制の違法性に端を発した、DeNAの全キュレーションメディアの閉鎖事件)もあり、良質で信頼できるコンテンツを作ることの重要性が、さらにクローズアップされていると藤元さんは言うのです。

ここでリボルバー代表の小川も、WELQ問題が重要な理由として、DeNAが違法なSEO(つまりスパム)によって検索結果の上位を独占したわけではないことを指摘します。WELQを始めとするDeNAのメディアたちは、Googleの検索アルゴリズムを徹底的に分析し、Googleの検索エンジンを欺く方法を発見したのです。仮にWELQの記事が正当に制作された信頼性の高い情報であったとしたら、DeNAのキュレーションメディア事業は問題視されることはなかったと小川は言います。
逆に言えば、WELQ問題の最も深刻なダメージは、Googleの検索エンジンを欺くテクニックが発見されたことであったのだと小川は指摘しました。

モノからコトへ。さらにネタへ。

続けて藤元さんは、冒頭でも話したAmazonの事例に再度触れます。何か欲しいモノがあれば、Amazonを見れば良い。モノが欲しいならAmazonがあればいいのだ、と藤元さんは言います。
逆に言えば、モノ以外のコト、たとえばエンターテイメントやライフスタイルに関わるコト、世界で起きているさまざまな事象であるコトは、FacebookやTwitter、Instagramなどのソーシャルメディア上にあふれています。しかし、これについて藤元さんは、SNS上の コト は、もはや ネタ へと変質していると言います。

より多くの人に自分のコンテンツをみてもらい、クリックしてもらうために、食いつきのいいタイトルや写真を使い、面白いネタを作ることに皆が腐心します。情報の発信側が、PV(ページビュー。コンテンツの閲覧数を示す指標の一つ)や、エンゲージメント(いいね!やシェアの数などを示す数値)のみに執着することで、コンテンツは本来のコトではなく、ネタへと変わってしまっている、と藤元さんは嘆きます。

FacebookやTwitter上において、面白いネタを作ろうとするばかりに、故意にデマを発信する人が増え、さらにそれらの真贋を確認することなく面白ければシェアしてしまうユーザー行動が、ソーシャル上に不正確な情報を蔓延させてしまう結果を生んでいます。これをフェイクニュースと呼びますが、WELQ問題がGoogleの検索結果の信頼性を揺るがしているのと同様に、ソーシャルメディア上のコンテンツの信頼性を大きく損なうことになっています。

オウンドメディアの重要性

こうした状況を受けて、企業は自らメディアを持ち、自分たちで正しいコンテンツを発信することが重要になった、と藤元さんは語ります。

自分のメディア、すなわちオウンドメディアを持ち、正確で正当な情報をコンテンツ化して配信していくことが、必要になります。すでに多くの有力企業がオウンドメディアを持ち始めており、さまざまな戦略を試行錯誤していることを、藤元さんは豊富な事例ーリアル店舗に消費者を導くO2O(オンライン・トゥー・オフライン)や、ECを含めて総合的に消費行動を捉えていくオムニチャネル戦略など)ーを紹介しつつ説明しました。

インターネット上での行動変容を鑑みたカスタマージャーニーマップの作成のススメ

藤元さんは、オウンドメディアを持ち、自分たちでインターネット上の消費者行動をデータ化できるようになれば、メディア側は消費者の生活シーンに応じたコンテンツ作りをしなければならなくなる、と語ります。冒頭で指摘されたように、スマホファーストのいま、いつでもどこでも情報が受け取れるようになったことも認識しなければなりません。

消費者の行動変容 をどうやって起こすか、いつどのようなタイミングで起きるのかを知る必要があります。消費者は、ただ値段が安いからという理由だけで行動変容を起こすわけではありません。シチュエーションによってそのきっかけは変わるのです。

例えばデパートに服を買いにいくときを考えてみましょう。
昔ならば、消費者はまず店舗に足を運んで、お気に入りのコーディネートを発見して購入するという流れだったわけですが、現代の消費者は店舗に着く前にスマホを使ってお気に入りのコーディネートを調べてからやってきます。逆に言えば、スマホ上にあらかじめそうしたコンテンツを置く=オウンドメディアを保有したり、キュレーションメディアやインフルエンサー(SNS上で影響力を持つパワーユーザー)などにコンテンツを書いてもらうことが重要になるわけです。店に来る前に、勝負は決まってしまうのです。

自宅でまったりしている消費者を、シャワーを浴びさせ着替えさせ外出させるきっかけを与えることは至難の技です。電車に乗っている消費者にならば、車内での広告やスマホでの記事がきっかけになって次の駅で降りてもらって店舗にむかってもらうことも可能でしょう。
つまり、消費者の行動は、場所や時間帯などに大きく影響を受けています。消費者に、より効率的に行動変容を促すためには、カスタマージャーニーマップが効果的だ、と藤元さんは言います。
消費者が顧客になっていく過程を旅と捉えて、その行動を時系列かつ視覚的に表現してみることが、重要なのだと藤元さんはまとめました。

◆カスタマージャーニーとは:顧客の商品・サービスに関する様々な情報接触から、認知、購入し、さらに購入後の行動(例えば 評価・レビュー・口コミなど)に至るまでを「旅」と捉え、その一連の行動を時系列で把握する考え方
◆カスタマージャーニーマップとは:カスタマージャーニーをわかりやすく視覚的に捕らえるため時系列にマップにまとめたもの

画像1: インターネット上での行動変容を鑑みたカスタマージャーニーマップの作成のススメ
画像2: インターネット上での行動変容を鑑みたカスタマージャーニーマップの作成のススメ

インターネットマーケティング・広告業界の問題

ここで小川は、メディア運営者への支援事業を行うリボルバーの代表として、現代のコンテンツマーケティングのあり方について、以下のように語りました。

コンテンツマーケティングまたはオウンドメディアを運営する企業は大きく分けると二つ

・ECやオムニチャネルによる事業推進、または人材採用や株価対策などを目的としたブランディング目的の会社
・メディアそのものによる広告事業やプロモーションを目的としたメディア事業者

前者については藤元さんがすべて解説してくださったので、と前置きした上で、小川は出版社などの従来型のメディア企業や、デジタル専業の新興メディアなどの事業モデルについて以下のように話しました。

日本の広告宣伝費は過去20年間を通じて横ばいながら、6兆円近い巨大市場。しかし、いわゆる4マス(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌)と呼ばれた従来の保守メディアのシェアは劇的に落ちつつあり、インターネットマーケティングの存在感が増している。

しかし、インターネット広告の主体はアフィリエイトなどユーザーの最終的な消費行為の背中を押す、ダイレクトレスポンス系の広告であって、販促費の範疇にとどまったまま。インターネット上でいまだ上流工程(下の図ではATTENTION部分)はテレビに代表されるマスメディアに抑えられたままの状態である。
メディアを運営する者は、より上流工程にシフトするべきであり、商品ブランドの認知度向上や購買意欲の喚起を担うことを目標にしなければならない。もっと言えば、上流から下流工程(ブランド認知から刈り取りまで)の全般に関わることを目指すことで、クライアント(広告主)と消費者のニーズを固く密着させる、真のメディアになることができる。

画像: 小川作成

小川作成

次回のワークショップのゲストはWeb担当者フォーラム安田英久編集長

次回のゲスト講師:安田英久氏。
テーマは「Webメディアのベテラン編集長からみた、2017年のメディア倫理とコンプライアンスのありかた」です。

ご興味のある方は上記ページをご確認のうえ、ご連絡くださいませ。
定員10名となっておりますので、原則として先着順です。ご興味ある場合は、お早めに申し込みください。

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