実はまさに今日、数年間続けてきたサブスク的なサービスを一つ解約しました。
解約、つまりChurn。SaaS事業者、サブスクリプションサービス提供者、D2C企業にとって、もっとも忌むべき言葉・事態、それがChurnです。

「動画見放題+DVD/BD/CD宅配レンタル」の定額課金(サブスクリプション)サービスを解約したわけとは

僕が解約したのは、某大企業が扱っている定額課金で「動画見放題+DVD/BD/CD宅配レンタル」を行なっているサービスです。

【サービス紹介】レンタル可能枚数制限(例えば月に8枚)内であれば月額定額の宅配レンタルサービス。Web/アプリで借りたい作品を登録しておくと、作品2本と返却用封筒が送られてくる(少なくとも20作品以上を常時登録しておくようにと推奨される)。
見終わって返却して、返却が確認されると次の作品が送られてくる(翌月配達率98%と謳われている)。返却しないといつまで経っても次の作品は受け取れない、月額の課金は借りても借りなくても定額で行われる。

実のところ、Wowow、Netflix、Hulu、Amazon Prime Videoの有料会員であり、インターネット業界にどっぷりなはずの僕がなぜ物理的メディア(DVD/BD/CD)の宅配レンタルをやっていたのか、不思議に思われる方もいらっしゃると思うのですが、毎週末の夜に映画を観る=52週間x2=104本の映画を鑑賞する、という固定的な習慣を自らに課すために、「DVDなどが自宅におくられてくる」という強制力?を敢えてポジティブに利用していたのです。

まあ、その物理的メディアを郵送するということ自体が、時代遅れのビジネスモデルというか、今の時流から完全にずれているわけで、ストリーミング型全盛のいま 僕でさえいつやめようかと考え始めていたのは事実です。とはいえ、この上述した強制力を理由に何年もの間続けてきたサービスを、実際解約したことに、ちょっとした感慨があります。

解約するタイミングを図っていたようなものとはいえ、なぜ今なのか、と言いますと、鑑賞済みのDVD/BDを返却して、それが確認されているにも関わらず、次の作品が送られてこないからです。
また、この事態を報告・解決してもらおうとサポートの連絡先を探したけれど、なかなかすぐに到達できず、しかも「作品が送られてこない」というもっとも重要かつシンプルなクレームを受け付ける項目がない。さらに、なんとかメールの宛先を見つけて送信すると、本人確認のために氏名、年齢、クレジットカード番号(もちろん下四桁だけだけど)、携帯電話の携帯識別番号などなど、ありえないくらいの情報を要求してくる。(いや、ID・パスワードだけで十分だろよ)

オンラインサービスとして、これはありえない、と普段温和?の僕もむかっ腹を立ててしまいまして、速攻で解約してしまったのです。

継続してくださるお客様を大切にしないサブスクモデルは潰れてしまえ

サブスクリプションに関わらず、サービスに不備があって、お客様からお叱りを受ける可能性はどんな事業にもあります。しかし、サブスクリプション型のサービスでは、そうしたお客様とルーティンかつ定型的なコミュニケーションではない接触は、解約(Churn)に繋がるピンチでもあると同時に、迅速かつ丁寧な対応を心がけさえすれば、そのサポート体制を評価いただけるチャンスになるかもしれないのです。その結果、災い転じて福となすことができるかもしれない。

サブスクサービスでは、定額(低額)のお支払いをなるべく長く続けていただかないとサービサーとしては元が取れないわけで、できるだけ良いサービスとサポートを常に提供し、上質な体験をお客様に提供することが求められます。LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)という言葉がありますが、サブスクリプションサービスにおいては、お客様との良好な関係を築き、短期間でお客様から利益を得ようなどと浅ましい考えを捨てて、じっくりゆっくり真摯に向き合い、お客様からのLTVを最大化する努力をしなければなりません。

その最大の障壁、というか、サブスクの死、と言えるのが解約。すなわちChurnなのです。
どんなにいいサービスでも、そのサービスにお金を払っている側は、いつでもChurnする権利を持っているし、ちょっとした不満や怒りでChurnに踏み切るかわからないのです。

前述の僕の例で言えば、次の作品が届かないというトラブル自体は(もちろん怒ってはいましたが)この数年間で初めてのことであるし、トラブルはゼロにはならないことを知っていますから、直接Churnに踏み切る要因ではありませんでした。
しかし、その起こり得るだろうトラブルを報告したり相談する窓口が明確でなく、むしろしかも数年来のロイヤルカスタマー(少なくとも僕の周囲でこのサービスを使っている人、いないほどですから!)を一見さんのように扱ったことに腹が立ちました。

つまり僕とこの某サービスとは、何年もの付き合いであるのに、なんのエンゲージメントも構築されていなかった、という冷たい事実を思い知らされてしまったからなのです。

逆に言えば、問題が起きた時に、その問題解決に真摯に向かう姿を(たとえそれがAIのようなシステムによる反応だとしても!)間髪おかず見せてくれていたとしたら、僕はそのサービスのファンになったことでしょう。

Netflixは、いつでもすぐに解約できるようにしていると同時に、僕の視聴履歴を分析して、次はこれはどうですか、こんな作品はいかがですかとリコメンドしてきます。ECであるAmazonも同じですが、Netflixでは都度課金されるわけではないので、単純にそれらの仕組みは顧客体験を豊かにして解約を防ぐ、というシンプルな目的に即したものです。

だから僕は声を大にして言います。

継続してくださるお客様を大切にしないサブスクモデルは潰れてしまえ と。定額型(サブスクリプション)だけではありません。サービスを継続的にお使いいただくことによって成立するモデル(例えばSaaS)であれば同じことが言えます。

当社もまた企業向けのSaaSサービスです。
毎月いくらお支払いいただいているかは別にして、継続して取引をしてくださるお客様を満足させることを最優先に仕事をしよう。そうでなければ(上述の)某DVD/BD/CD宅配レンタルサービスのようになるよ、と、社員・ステークホルダーに念入りに訴えかけようと思っています。いままでも、これからも。

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