それは、SDGsと経済安全保障、です。
どちらもインターナショナルなキーワードですが、前者は世界もしくは地球の“グローバルな”危機管理、後者は国家の危機管理 に直結した“グローバルではない”ものです。
今年になってその重大さを唱える声が大きくなってきているのは、いますぐ本気で着手しないと手遅れになる、待ったなし!と施政者たちが身に沁みて理解した証と思います。
SDGsとは
SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で、日本語で言えば 持続可能な開発目標 となります。SDGsは2015年9月の国連サミットで採択され、17のゴール・169のターゲットから構成された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
上述のように、この言葉自体は2015年9月に生まれたわけであり、日本においては大企業のIRやCSRとリンクして広まってきていましたが、冒頭に述べたように今年(2021年)になって急速に多くのメディアが取り上げ、一般認知を急いでいるように思います。
ちなみに、17のゴールの達成は全体目標としては2030年まで、となっていますが、個々のゴールやターゲットの達成についてはもちろん優先順位があるはずです。
現時点でSDGs的に最も急がれているのは脱炭素(カーボンゼロもしくはカーボンニュートラルも同じ意味です)、二酸化炭素の発生を減らして地球温暖化を止める活動でしょう。
地球温暖化は異常気候を引き起こし、下手をしたら人類だけでなく相当数の生物の絶滅を招く、環境変化・破壊に繋がりかねないので、一刻を争う超国家的な≒地球人としての重大タスクになっています。
我々リボルバーはエネルギー開発にも携わっていないし、二酸化炭素の排出量を直接管理できる事業もしていないので、地方創生や性差間の差別の撤廃など できることからやっていこうと考えてはいます。
経済安全保障(経済安保)とは
さて、SDGsが超国家的な活動とすれば、経済安全保障(経済安保)という言葉が意味するのは、国家間の蹉跌の中で自分たちの身を守ろうという動きになります。
現在,経済分野を含む様々な領域における米中の対立が激しさを増す中,我が国においても,経済安全保障の観点から技術流出等に対する懸念が高まっています。こうした情勢下,先端技術を有する我が国企業,大学,研究機関等が多数存在しており,経済安全保障は重要な課題となっています。技術・データの流出が,我が国企業等が有する優位性や我が国の安全保障に与える影響は大きく,これを未然に防止することが何よりも重要です。また,外国資本等による重要施設等周辺での不動産取得に対する政府の関心も高まりを見せています。
本特集ページでは,重要情報の流出等防止のために,関連情報の発信を行っています。
↑経済安全保障の説明ページが暗号化されていないというのは、悪いジョークですが(*_*)
これまで安保と言えば、民主主義圏から共産主義圏に武器輸出したらダメよ(COCOM)のような、純粋に軍事的と理解できる分野の規制を思いつくのが自然だったわけですが、核抑止力によって直接的な戦争を起こしづらい現代では、経済的なせめぎ合いの中で優位に立とう、経済力を武器としようという動きが高まってきています。いわば経済活動が、新たな代替戦争と見做されるようになってきているのです。
その結果、国家がより経済活動に関与するようになり、ひいては個人の活動にまで影響するようになってきています。
例えば我が国において、個人情報保護法の改正実施が来年(2022年)に迫っていますが、この改正も単に人権やプライバシーの問題だけでなく、国家の安全保障に関わる問題とみなされ始めています。
わかりやすいのがGDPRです。GDPRは、EU(欧州連合)が2018年5月25日付けで施行した、新たなデータ保護規則(略称GDPR)で、消費者の個人データの管理を強化することを目的として、新たに制定された法律ですが、基本的には米国の四大IT大手Google Apple Facebook Amazon、いわゆるGAFAが個人情報を大量に独占していることを危険視したものと言われています。
(EUと米国は同じ民主主義・自由主義陣営に属していると思われますが、それでも 潜在的に敵国になる可能性がないわけではないし、ほんの少しでもリスクがあるなら備えておく、ということなのでしょう)
仲間同士であってもこれなら、仮想敵国と目される相手なら、もっと露骨でしょう。米国が中国企業に対して行っているさまざまな圧力(TikTokやファーウェイなどへの対応を思い出してください、もしくはEコマースの雄であり携帯電話事業も併せ持つ楽天が、メッセージングサービス“ウィーチャット”を持つ中国企業テンセントからの出資を受けたことに対する世間の対応でもいいです)は、まさしく冷戦時の反応であると思います。
経済安全保障の考え方により、経済活動に国家的規制が入り込む可能性は高いが
ここで、僕はこの経済安全保障というコンセプトについて、何か評価を下そうとは思いません。
経済安保という考えによって、個々の自由貿易やグローバリズムに諸々圧力がかかってくることもあるでしょう。その圧力のレベルによっては、賛同できないと感じてしまうことはあるかもですが、現時点では、やむを得ないし、当面はそれに従うべきと考えています。
SDGsは、国を超えて(二酸化炭素の排出量の規制などは国家ごとに割り当てられていますけど)できることをなんとかしなきゃ!という掛け声と同時に、いついつまでに実現しよう!または 実現しなけりゃ自分たちの子孫が苦しむ、という共通認識ですから、比較的僕らも積極的に立ち向かおうと考えやすい、非常に前向きなキーワードです。
地球人としての壮大な活動をやっていこうと心に決めやすいSDGsに比べると、自分が所属する国家の安全保障のために、という経済安全保障の考え方はだいぶ縮こまっているというか、なんとなく20世紀的な感覚です。しかしながら、惑星 地球号という同じ船に乗りながらも、自分が暮らすテリトリー(国家)を決め、必死に保持しながら生きていかねばならない状況に変わりはなく、それを受け入れなければならないことも確かです。
具体的には何するの??
それでは経済安全保障を意識しながらビジネスをするということはどういうことになるのでしょう??
業種によっていろいろ違いが出てくると思いますが、共通して言えるのは、顧客データ(個人情報含む)や取引ログを、見知らぬ第三者に漏洩させないこと、つまり情報セキュリティ管理には気を配らなければならないことでしょう。
昨今の企業は社内に情報を置かずクラウドで管理しているところも増えていますが、データがどこに格納されているかも把握していなければなりません(データウェアハウスの業者や、その格納場所に至るまで管理しないとなりません)。そして、経済安全保障的な発想では、その業者や場所は日本であるべきで、安いからといってアジアの大国のどこかに置くなんてことは厳禁です。前述のGDPR的発想でいえば、米国であってもNGということになるかもしれません。
自分たちが預かる情報にそんな価値ないと思われる方もいらっしゃるかもですが、情報は他の情報と紐付けられると途端に巨大で重要なモノに変わる場合もあります。予断は禁物なんです。
つまり、基本的には日本企業たる我々としては、日本以外の海外企業に対して一切の秘密情報を漏洩させてはならない。そのためにはありとあらゆる施策を講じなければならないということになります。
世界政府による地球全体での平和的な日々なんてのは、まだまだ先のことのようです。嘆いてもしょうがない、まずは日本国家を守りながら経済活動を続けていくことを考えましょ。それが2021年6月時点での、最も正しい道だと思います。
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。