コンテンツマーケティングをテーマにしたオンライン勉強会「Workshop@THE FACTORY」。2022年4月21日に開催された第45回では、NEW STANDARD株式会社 代表取締役 久志 尚太郎氏に、「ミレニアル&Z世代の消費価値観とオウンドメディア」をテーマにお話しいただきました。今回はその講演レポートをお届けします。

久志 尚太郎
2014年にTABILABO(現: NEW STANDARD株式会社)を創業、デジタルネイティブなクリエイティブディレクターとして事業&ブランド開発を主導している。「意味」のイノベーションやデザイン思考が専門分野。

NEW STANDARD株式会社は、前身となる株式会社TABILABOをリブランディングして生まれた企業です。代表の久志さんは、スマートフォンメディア運営を軸としたメディアカンパニー・TABALABOで培ってきた知見を活かし、変革が求められる現代において、新しい基準や価値観で価値を捉え直して、新しい価値を創出することをミッションにNEW STANDARD株式会社へリブランディングを行いました。

同社の事業は、独自のケイパビリティ(能力・素質の意)による「新しい価値(意味)」の創造です。旧態依然としたメディア運営やマーケティングを行うのではなく、これまでにない視点で物事を捉え、新しいかたちで展開すること。これまで150社以上の企業でミレニアル世代やZ世代を対象に、製品の販促プロモーションやプロジェクトプランニングなどを手掛けています。

そんな豊富な経験を持つ久志さんに、今回は「ミレニアル&Z世代の消費価値観とオウンドメディア」というテーマで、オウンドメディアのあり方についてお話しいただきました。

消費価値観の変化とは

社会の消費実態について、まずはその変遷を解説していただきました。

モノ消費からコト消費へ

1990年代までの日本では、商品そのものに価値を見出し、それを所有することで喜びを感じる「モノ」消費が主流でした。

2000年代に入り世の中にモノが溢れるようになると、消費者は商品そのものではなく、それを手に入れたあとに得られる“体験”を重視するようになります。これが「コト」消費です。

久志さんは、商品の活用例やサービスの体験談など、消費者にとって有益な情報を発信するオウンドメディアは、「コト」消費を軸にしたコンテンツづくりが主になっていると説明。さらにこれからは、そこにもう一つ視点を付け加える必要があると言います。それが、新たな消費行動として現れた「イミ」消費です。

イミ消費による意識の変化

画像: 時代はデジタル社会へと移り変わり、モノからコトへ変化した消費行動。昨今では、災害や未知のウイルスなどで環境も大きく変化。それにより人々の消費行動も変わってきた

時代はデジタル社会へと移り変わり、モノからコトへ変化した消費行動。昨今では、災害や未知のウイルスなどで環境も大きく変化。それにより人々の消費行動も変わってきた

「イミ」消費とは2010年以降に生まれた消費行動で、商品やサービスそのものではなく、そこに付帯する社会的な価値観を重視する消費行動のことです。分かりやすい事例でいうと、サステナブルな商品を展開し、SDGsに貢献しているブランドを支持する、といったところ。

この消費行動は、災害や未知のウイルス、戦争といった昨今の世界情勢を受け現在も加速中。これからさらに多様化していくことが予想されます。

ミレニアル世代・Z世代の価値観

次に、今回のテーマにもあるミレニアル世代とZ世代の価値観についてです。

「ミレニアル世代」とは1980年〜1995年に生まれた人たちのことで、デジタル社会に移行していく時代に育った世代をいいます。「Z世代」とは1996年〜2015年までに生まれた人たちを指し、物心ついたころからデジタル社会が確立されていた世代のことです。

久志さんが提示してくださった資料によると、ミレニアル世代とZ世代の価値観には下記のとおり共通点が見られます。

ミレニアル世代・Z世代の価値観

  • 高い社会課題意識からくる、作られた広告訴求に対する嫌悪感
  • ユーザー起点の製品や顧客体験(CX)による自分ごと化
  • テクノロジーの発展により増す、透明性やリアルな物語への共感
画像: 物心つく頃にはデジタル社会が当たり前になっていた両世代。その価値観には共通点も多い

物心つく頃にはデジタル社会が当たり前になっていた両世代。その価値観には共通点も多い

ここにSDGsをはじめとする世界の新しい基準(下記参照)が加わることで、これまで当たり前のように考えられてきた商品展開やサービスのあり方に、大きな変化が生まれてたきたそうです。

SDGsがリードする世界の新しい基準

  • セクシャリティやビッグサイズモデルなどの多様性
  • オルタナティブな価値観のメインストリーム化
  • ウェルビーイングやマインドフルネスの重要性の高まり

例えばファッションブランドでは、特定の人種や体型の人をモデルとして起用するのではなくダイバーシティを重視したり、フェイクファーやフェイクレザーを安価で手に入る偽物としてではなく、環境や動物保護の観点から価値ある代替品として展開したり。これまでの多くの人が共通して持っていた既存の価値が、新しい価値(意味)へと変わってきたのです。

画像: ミレニアル世代・Z世代の価値観

久志さんは、こうした消費価値観の変化や世界の基準を踏まえ、コンテンツ制作においても新しい基準・新しい価値観で捉え直していくことが重要だと断言。そこで必要となるのが「ダイナミック・ケイパビリティ」という考え方です。

ダイナミック・ケイパビリティで変革を

既存の価値を見直し新たな価値を創造する

「ダイナミック・ケイパビリティ」とは、カリフォルニア大学バークレー校のデイヴィッド・J・ティース氏によって提唱された戦略経営論で、“企業変革力”のことです。

ダイナミック・ケイパビリティとは、環境や状況が激しく変化する中で、企業が、その変化に対応して自己を変革する能力のことである。

変革と一口にいっても、それには下記の通り3つの能力が必要となります。

一つは、状況を的確に感知(センシング)する能力。もう一つは変革へのタイミングを捕捉(シージング)して、既存の知見を再構成し力にする能力。そして最後は、会社全体を刷新して変革(トランスフォーミング)させる能力です。

画像1: 既存の価値を見直し新たな価値を創造する

久志さんは2014年に立ち上げたTABILABOを、この戦略経営論ダイナミック・ケイパビリティに基づいてNEW STADARDへと変革させました。さらに、toC向けのメディア運営で得た知見やユーザーデータ&インサイトを、toB向けレポートやセミナーとして発信したり、Z世代やミレニアル世代向けのデジタルネイティブ・ブランド創造ソリューション“BDX”として提供するなど、既存コンテンツの価値を再解釈して事業へと発展させています。

まさにこの変革の力こそが、これからのオウンドメディアには必要なのです。

画像2: 既存の価値を見直し新たな価値を創造する

そして今はVUCA社会(先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態)であると前置きしたうえで、こう結びました。

「今はYoutubeやTwitter、FacebookやInstagramといったソーシャルネットワークにトラフィックが集中しており、パブリッシャーがこれまでと同じようにコンテンツ発信だけで成長していくのは難しいでしょう。なぜならそこは今やレッドオーシャンであり、マーケットとしては激戦区だからです。そこで成長していくには、オウンドメディア=to Cという既成概念自体を取り払い、自分達のコンテンツの出力先を一考することが必要になってきます」

画像3: 既存の価値を見直し新たな価値を創造する

オウンドメディアをより活用するために

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オウンドメディアとしてコンテンツ発信のみに特化するのではなく、あらゆる事業形態に発展できる柔軟性が魅力で、メディア事業のハブとなるプラットフォームとして最適です。

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次回のワークショップは2022年5月19日(木)に開催予定です

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