世界一の成功事例があるならば、その事例をもたらしたアイデア自体が世界一なはずです。ならば、その世界一のアイデアをまずはパクることを考えるべきではないでしょうか。
ロールモデルを見つけたら、徹底的に真似て盗んでパクれ。
オリジナルの創意工夫をしようと思うな(→傲慢になってはいけない)
前置きが長くなりました。
僕が何を言いたいかというと、サブスクリプションモデルを自分のモノにしようと考えるのであれば、そしてサブスクサービスで最も成功しているのがNetflixであるとすれば、彼らの成功モデルを徹底的に分析し、そして徹底的にパクるべきだということです。
もちろんNetflixは動画に特化したサービスですから、異なる分野にコンセプトを横展開しようとするならば、必ずしも同じことができるわけでもないかもしれませんが、本質的な部分=エッセンスは共通なものがあるはずです。パクるのはそこです。
僕が思うに、Netflixのビジネスモデルの中で特筆すべきは以下の4つです。
- 都度課金ではなく、定額コストを払えば全てのサービスを享受できてコンテンツを受けとれるというシンプルさ
- 月額一本で、いつでも止めてもいいよという潔いスタンス
- オリジナルコンテンツに80億ドルも投資
- 徹底的に視聴者の嗜好を研究しパーソナライズするデータ重視経営
1については前回も触れていますので、ちょっと引用します。
読みたいコンテンツだけを買うことができるようにする、つまり都度課金型のコンテンツ販売もありえますが、僕はそれはやめたほうがいいと思っています。
理由は二つ。一つ目は、NetflixがピュアなSVODであり、都度課金には手を出していないのと同じで、定額課金のほうが集めやすいからです。また定額課金に都度課金を混ぜるのも(Netflixがやっていないように)無駄なオペレーションが増えるのでやめるべきと考えます。
もう一つの理由は、コンテンツとして割高な提供となるからです。例えば一般的な月刊誌であれば1冊数百円から千円程度でしょう。先ほどの方程式に鑑みてもらいたいですが、1つのコンテンツで課金するとき、定額の月額と比べて釣り合わない値付けになりがちです。それは定額の価格に対する正当性を失わせることになりかねないし、逆に都度課金の価格の高さを実感させることになりかねないと僕は考えます。
追随者は、スペシャルコンテンツのようなものに対して別に課金したりして(例:新作映画を観たいなら追加で400円払え、みたいな)、定額課金だけで済まさずに都度課金を混ぜて、課金ポイントをなるべくたくさん作ろうとしがちです。また、有料会員への特典としてオフラインのイベントなどを催すのはいいのですが、そのイベントを別料金にしたりします。
Netflixがこれをやらないのは、サブスクモデルが継続性が全てであり、課金するポイントを増やせばその分購読者が”金を払う”という行為の意味を考え直すきっかけを与えて解約を考えさせてしまうリスクがあることを知っているからです。また、いろいろなところで課金しようとすれば、それだけオペレーションが複雑になります。Netflixはシンプルに保つべきところはシンプルにして、余計なオペレーションコストを払わない。その分視聴者のモチベーションを維持し高めるための工夫や、そのためのデータ分析に時間と金をかけるのです。
2から4は、上にも書いた継続性の担保、言い換えれば解約率の低減につながることです。
普通の企業なら、解約ボタンを隠したりして解約しづらくしようとしてしまいがちです。また、少し”お得な”年額一括払いを用意して、すぐに解約をできないような縛りを与えたりします。Netflixにしても当然会員に解約されたくありませんが、彼らがすることはただ一つで、とにかく会員を悦ばせようとする。よいコンテンツをたくさん作ったり、会員の好みを理解して、より楽しめるコンテンツを紹介したりするのです。つまり、無理に解約を引き止めるのではなく、続けようかなと自然に思ってもらえるような、正当な努力をし続けるのです。
ログインして使うサービスの場合、ID(アカウント)を複数人数で共有して、いわば割り勘で使おうとする不心得者が多くいますが、Netflixは気にもとめません。むしろ、一つのアカウントで平均3-4人が視聴しているらしいことまで掴んでいます。Netflixの競合企業の中には、こうしたIDの共有を許さないような仕掛けを作ることに結構なコストを使っているところもありますが、Netflixは全く気にしないのです。
つまり、課金方法はひたすらシンプルにして、提供するサービスに磨きをかけるという正当なやり方を徹底する。解約されないために、会員を徹頭徹尾楽しませる努力(データを最重要視して、科学的に分析し続ける不断の努力)をする。それがNetflixです。
ここまで褒めると、Netflixの回し者か?とかお金もらってるのか?と揶揄する人がいたりしますが苦笑、先行者の揚げ足を取ることを考える傲慢さが僕にはない、ということです。いまうまくいっている成功者を調査し、分析し、そのすごいところを発見したら、ひたすら真似て盗む。下手くそなパクリだから悪く言われるだけで、完コピを目指して初めて評価の対象になることを理解しなければなりません。
繰り返しますが、
優れた芸術家はまねをし、偉大な芸術家は盗む。
中途半端なところで創意工夫やオリジナリティを出そうなどと考えることは、本当に傲慢なことなのだと強く戒めなければならない。そう思っています。