『エロティック・キャピタル すべてが手に入る自分磨き(キャサリン・ハキム著。共同通信社)』という書籍が発祥と思われるコンセプト、エロティック・キャピタルをご存じでしょうか。
エロティック・キャピタルとは、人間が持つ魅力、特に性的な魅力が、実は経済的価値を持っているという洞察です。経済的価値を持っている、すなわちキャピタル(資産)である以上、運用が可能です。このエロティック・キャピタルを上手に運用することができれば、社会的な名声や富を得ることができるという考え方です。
基本的にはこのコンセプトは個人に適用されるべきものですが、実は企業(のブランディング)にも応用できる考え方なのではないか、と考えています。

個人発のマーケティング、ブランディング手法を企業が採用する時代

20世紀においては、少なくともテクノロジーやビジネスの場における流行というものは、まず企業が運用して成功した事例が、徐々に中小企業や消費者に向けて簡易化され、普及していく、という構造が通常でした。例えば電話やFAX、もしくはPCなどのテクノロジーはまず企業がビジネスに使用し、それが個人にも広がっていく。
あるいはPCに用いる複雑で高機能なOSやアプリケーションが徐々にモバイル機器にも適用されていくのが普通でした。それが最近では、逆に消費者間のトレンドやノウハウが企業活動に逆輸入されていくようになっているのです。

例えば、iPhoneのOSであるiOSは、もともとMac OS Xの簡易版的な存在でしたが、徐々にまず消費者向け、大衆向けに考案されたシンプルなユーザーインターフェイスやテクノロジーを持つ下位レイヤーのオペレーティングシステムが熟成されて、それが上位レイヤーであるはずのMac OS Xに採用されるという逆流現象が起きていることでも、それは理解できるでしょう。

この逆流現象は、ソーシャルメディアの普及に従ってどんどん顕著になってきています。ことに消費者を対象にビジネスを考える現場では、もはやそれが常識です。

InstagramやTwitter、YouTubeなどで個人が人気を博して、実際に金を稼げるようになっていくと、彼らを利用しようとするインフルエンサーマーケティングが生まれますが(前項参照)、今度はその個人が実現した方法が分析・研究し、科学的にマニュアル化できるメソッドへと昇華され、企業サイドで運用されるようになります。コンテンツマーケティングや、それにつながるD2C(Direct To Consumer)といったコンセプトはまさにそれです。

前回のポストでも書きました

企業におけるエロティック・キャピタルとは

昔、当社に投資をしてくださっている某VCの担当の方が、よく「シズル感」という言葉を連発していました。サービスや会社そのものが"シズル(Sizzle)"、すなわち大きく急成長して金を稼いでくれそうな、美味しそうな感じを持っていることが大事、というわけです。

シズル(sizzle)とは、揚げ物や肉が焼ける際の「ジュージュー」と音をたてる意味の英語で、そこから転じて、消費者の感覚を刺激して食欲や購買意欲を喚起する手法を意味する語になりました。また、最近では瑞々しさや新鮮さ、その商品の魅力やセールスポイントなど幅広い意味で使われています。

これって、一種のエロティック・キャピタルだと思いませんか?

投資家が投資したくなるような事業性・市場性・成長性、大化けしそうな経営者(起業家)の魅力、事業計画書に示された数字だけではない、なんとも美味しそうな感じを持っている会社は、とかくお金を集めます。それがベンチャー企業におけるエロティック・キャピタルだと思います。

やってることは同じはずなんだけど、あっちの会社は時価総額がどんどん大きくなるけど、なんでうちの会社は??と首を傾げている経営者のみなさま、それはあなたの会社(もしくはあなた自身)にシズル感がないからかもしれません。会社的にエロティック でないと思われているからかもしれませんよ。

会社がエロティックというのは、もちろん経営者や社員がみなイケメン・美女揃いである、という意味ではありません(いや、キラキラ女子という言葉が流行ったように、そんなピカピカの社員が集まっているなら、事業も素晴らしいに違いない!とうっかり思わせてしまうパワーは生まれるかもですが)。

なんかやってくれそう!とか、今時の流行にバッチリ合ってる≒時流に乗ってる、といったことの方が大きいです。例えばちょっと前ならソーシャルゲーム、キュレーションメディア、アドテク、フィンテック、ブロックチェーン(もしくは仮想通貨)といったキーワードにうまくハマっていることが大事だったし、いまならAI開発とかドローンなどの成長分野で頭角を示しつつあることが大事かもです。

もう少し汎用的な言い方をすると、投資家もしくは潜在顧客にウケそうな”何か”、言い換えればセールスポイントを見つけ出し、磨き上げ、それを徹底して訴求するための戦略を考えること。
もしセールスポイントがなければ作る。それが大事です。
Instagramで華やかな画像を披露する美女たちと同じ覚悟が必要ということです。胸がなければ脚で勝負、もしくは整形して胸を大きくする人だっています。(最近マドンナが豊尻手術をしたらしいということでネット民がざわついていましたが、当の本人は"Entitled to Free Agency Over My Body Like Everyone Else!! "(みなさんと同じで、私の身体にはエージェントはいないんだから、自由にするわ)と何処吹く風の様子。正しいですね)

起業家、経営者、事業責任者。どんな立場でも、プロジェクトを成功に導くならば、自分たちのウリを見出す必要があります。それこそが、ビジネス上のエロティック・キャピタルです。そしてそのキャピタル(資産)のタイプにふさわしい運用の仕方を考え、実行するべきです。

その努力を怠ったり、考えすぎまたは慎重すぎて時機を逸することがあってはなりません。
若さのようなエロティック・キャピタルであれば時とともに勢いを失っていきます。同じく、企業におけるエロティック・キャピタルもまた、使うタイミングというものがとても大事なのです。

お問い合わせ
コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.