辛抱強く、粘り強く。簡単に投げ出す傲慢さを捨てよう
以前、僕はこのブログで以下のように書きました。
あるサッカー選手が神様ジーコに対して、日本人プレイヤーに一番必要なことは?と尋ねたことがあったそうです。ジーコはちょっと考えてから、「それはトラッピングをもっと練習することだ」と回答したと言います。
これを聞いたそのサッカー選手は「トラッピングなんて基本中の基本で、誰でもできるだろう?」と不審に思いましたが、ジーコはさらにこう言ったそうです。「日本人選手が行なっているのはトラッピングじゃなくてワンタッチプレーだ。プレイを急ぐばかりにきちんとトラップせずに反応しているから不正確になる」
我々からすると、ジーコをはじめとする世界の超一流サッカー選手は、パスやシュートをする際に来たボールを直接蹴っているように見えるのですが、実は彼らはきちんと受けて、止めて、蹴る方向を判断して、それから蹴っている。このプロセスが魔法のように速いから、来たボールを直接蹴っているように見えている、というわけです。つまり、ちゃんとした訓練もせずに脊髄反射的な行動をしても、たとえたまにマグレでうまくいくことがあったとしても、たいていはろくな結果には繋がらない。
僕は仕事というものはすべからく、同じようなプロセスを正確に、かつ誰よりも速く行う思考上のトラッピングであると思っています。そして、基本通りのやり方を身につけた上で、それを魔法のような速度で行えるように何度も何度も練習して磨き上げる、それが勉強であり、訓練であり、日々の修練であると思っています。
なにか判断を下したり意思決定を行わなければならない事態が発生する→ その事態を因数分解して、隠れた問題やリスクの大きさを見積もり、解決方法を模索する→もっともリスクが小さく、メリットを最大化できる方法を選び、実行する。それが仕事というものであり、サッカーなどのスポーツとなんら変わりはありません。
(リスクをゼロにできるかどうかはもちろんわからない、メリットがないかもしれない。大事なことは極力リスクを減らすことを優先することです)。
もちろん、短期間で優れた技を身につけることができるセンスというものは存在していて、才能の有無は不平等なものですが、それでもある程度やってみなければ、自分に才能があるかどうかさえわからないものです。
それなりの給料をもらえる仕事であれば、それなりの努力をもって身につけなければならないスキルやノウハウが存在します。努力もなしにすぐにそれらを身につけられると思うのであれば、もしくは十分な時間をかけずにすぐに投げ出すような人たちは、僕から言わせれば恐ろしく傲慢な人たちです。
逆にいうと、上手な人、できる人をみて“ああ、彼らだからできる、自分にはできない”と思うのは勝手ですが、そういう人たちに限ってちゃんと努力していない。なにもしてないのではないし、怠惰なわけではない、ただ、正しいやり方で努力せず、しかも、正しいスキルを身につけるまでに必要な所要時間やステップをちゃんと見積もっていないから、すぐに諦めてしまう。そんな残念な人たちなのです。
当社はコンテンツマーケティングを支援するSaaS型のプラットフォーム事業を行なっていますが、以下のブログによると「SaaS経営はとにかく時間がかかる」のだそうです。ARR(Annual Recurring Revenue/年額定額収益)が100億円に達するまで少なくとも8年かかる、と書いてありますが(いや、どんな事業でも100億円に達するには相当時間かかるでしょうがw)、大事なことは100億円の会社を育てようと思うのであれば少なくとも8年以上は激務に耐えなければならない、ということです。
つまり、8年は辛抱しようと思わなければSaaS事業を立ち上げてはならないし、それより短い期間で投げ出すのは阿呆という意味になります。
もしくは「俺なら3年でできる!」という過信を抱えた傲慢な人間だったのかもしれません。
努力しましょうよ、勉強しましょう、いまできないことは努力不足、いつかは絶対できるようになる。逆上がりをあきらめずになんども鉄棒に向かって練習する小学生のように、できるまでトライしましょう。少なくとも、一般的にそれができるまでに必要な時間くらいはかけましょう。それいじょうかけてもできないなら素質がないと諦めればいいんです。でも、それより短い時間しかかけずに投げ出すのは、根気がないか、傲慢な人だとわかってください。
キングカズの姿勢に学びたい
これも出典が明らかでなく、どこで記事を読んだかも忘れてしまったのですが、50歳を過ぎても現役として自分の子供くらいの年齢の若手選手とともに汗をかき続ける偉大なサッカー選手、キングカズこと三浦知良選手はいまだに「もっとサッカーが上手くなりたい」と思いながら練習しているそうです。
このエピソード、めちゃくちゃシビれませんか?
↓ここにありました!
引退して解説者や指導者の道を選べば、いつでも偉そうな顔をしていられるのにカズさんは選手にこだわり、自らプレイすることにこだわって生きています。そのうえで、もっと上手くなりたいと思いながら練習しているとすれば、こんな謙虚で向上心の強いプレイヤーはなかなかいないというものです。(あ、ほかの解説者や指導者、元選手が全員偉そうな顔をしている、という意味ではありません^^;、そういう人もいるにはいると思いますが)
結果を見れば、三浦知良選手はW杯に出られなかった。彼より年若でW杯で活躍した選手は多く、今後もカズが代表に呼ばれることはおそらくないでしょう。だから単純に選手としての実績だけを比べてカズより優秀な選手の名をあげることは難しくないかもしれない。
また、現役にこだわらずさっさと引退して自分探しの旅に出たり、投資家を気取ったりする世渡り上手な賢さを見せるプレイヤーもいます。(あ、そういう選手をダメと言ってるわけではないですよ!あくまで本記事の中での比較です。あ、いや、やっぱりそういう姿勢は僕にはあざとく見えるかなw)
そんな中で、あくまで現役、つまりサッカー自体をプレーすることにこだわって、現役を続ける三浦知良選手は浪花節というか、いかにも昭和世代で泥臭いですが、僕にはとってもカッコよく見えます。
まして、引退間近であろう年齢にいたってもまだ「サッカーがうまくなりたい」と話す姿勢は頭が下がります。
僕もまだまだ「世界を変えたい」とうそぶいて、シリコンバレーや中国に負けないIT企業を育て、世界に通じるサービスを作る努力を続けなければ。起業家として現役を貫いてやろうと思うのです。