東京海上日動火災保険株式会社 藤岡真梨奈氏 講演
続いてお話しいただいたのは、東京海上日動火災保険株式会社の藤岡真梨奈さんです。
藤岡 真梨奈(ふじおか まりな)
東京海上日動火災保険株式会社
dX推進部 ビジネスデザイン室 企画グループ
主任
2017年に入社以来、営業部署にて電機メーカー等法人の職域マーケットを担当し営業。2023年4月に現在の部署に異動し、デジタル、宇宙領域の新規事業の企画や開発に従事。
東京海上がオウンドメディア「SpaceMate」を始めた背景とその役割について、松本さんにお話しいただきました。藤岡さんにはその続きとして、オウンドメディアの立ち上げに至った経緯と、大企業がオウンドメディアを作る難しさをお話しいただきました。
オウンドメディアの構築に至るまで
藤岡さんは2017年に東京海上に入社後、6年にわたり営業部門に従事し、2023年4月に現在の部署に異動されてきました。その時点ではオウンドメディアを作るということが決まっていたわけではなく、宇宙関連で何か新事業を立ち上げるという漠然としたミッションだったそうです。そこから具体的な企画に落とし込むまで、怒涛の新規アイディア出しの日々が始まったと言います。
まず取り組んだのが、「宇宙✕◯◯」というアイディアを毎日一人10個出していくというもの。営業のときとは使う頭が違って、最初のうちはかなり苦しんだそうです。沢山のアイディアを出せる自信があったにもかかわらず、すぐに限界が来て手が止まってしまったという藤岡さん。日頃からいろいろなことにあまり関心を持てていない自分を実感するころには、毎日の打ち合わせが苦痛になっていました。
このように初っ端から壁にぶち当たってしまった藤岡さんですが、その後の起点となったポイントがあったと言います。「小さな気づき」「毎日の日記」「チームの存在」の3点です。
1. 小さな気づき
新規事業の立ち上げに初めて携わる藤岡さんは、自分の出すアイディアに自信を持てずにいました。しかし、自分としてしっくり来ていないアイディアであっても、それが他のメンバーのよりよいアイディアに繋がっていることに気づきました。それ以降、打ち合わせの場で発言をためらうこともなくなり、アイディア出しが少しずつ楽しくなっていったそうです。
2. 毎日の日記
藤岡さんは、毎日日記をつけているそうです。日記と言っても大層なものではなくメモ書き程度のものとのことですが、毎日の小さな気付きを書き留めておくことで、アイディアのヒントになったり振り返りの機会になったりしたと言います。
3. チームの存在
SpaceMateの立ち上げは、自分ひとりでは到底なし得なかったと藤岡さんは振り返ります。どんな小さな意見でも肯定してくれる雰囲気や、何とか形にしたいという思いをチーム全員が持っていたからこそ、乗り切ることができた企画フェーズ。宇宙がテーマのオウンドメディアという企画も、チームミーティングの中で出てきたアイディアなのだそうです。
大企業でオウンドメディアをつくる難しさ
アイディア出しのフェーズが終わり、オウンドメディアを構築することが決まりました。苦しいアイディア出しを経験したからこそ、この企画を進めたいという思いが強くなったと藤岡さんは言います。
関係部署への企画の壁打ちを数十回行い、そのフィードバックを反映した企画書が承認されたのが(2023年)7月末。しかし、すぐにでも取り掛かりたいと意気込む藤岡さんには、社内チェックの壁が待ち受けていたのです。
まず最初の壁はシステム面でした。セキュリティを最重視する金融機関特有の事情から、自社でシステム環境を構築できないという社内判断がありました。検討の結果、リボルバーのコンテンツマーケティングスイート「dino」を利用する方針になったものの、社内承認を得るのは簡単ではなかったようです。
「金融機関の厳しいセキュリティ基準があり、クリアすべきチェック項目は100を超えました。その全てに一つ一つ対応いただき、オウンドメディアを構築できる環境が整ったことには、非常に感謝しています」と藤岡さんは振り返ります。
ようやくシステムが決まっても、プロジェクトはなかなか進みません。関係各所と摺り合わせをしたくても、打ち合わせがセットされるのは早くて2週間後。早く進めたいという気持ちとは裏腹に、様々なタイムロスなど苦労も多かったと言います。
「当初はローンチ期限を年内(2023年12月)に設定していたのですが、このようなタイムロスが重なって後ろ倒しになり、最終的にはこの3月末にようやくリリースすることができました」と藤岡さん。企画したメディアを世に送り出したいという強い気持ちと、粘り強く少しでも前に進める努力が実ってのリリースでした。「構築に携わってくださった社内・社外の皆さまのご支援によって、形にすることができました」と謝意を表す表情は、充実感に満ちていました。
サイトのローンチを終えた現在、次のステップである新規サービスの企画と検討を一からスタートしたところだそうです。とはいえその前に、「集客」という大きな壁があるとのこと。このレポート記事を読んだ方は、ぜひ「SpaceMate」にアクセスしてみてください。