岩木 遼(いわき りょう)
株式会社プラットフォーム・ワン
メディアビジネスグループ パブリッシャーパートナーユニット
コンサルタント
2023年、株式会社プラットフォーム・ワンに入社。メディアビジネスグループに所属し、媒体社様向けの営業とコンサルティングを担当。自社で保有するツールのご紹介や、博報堂グループの案件をご紹介することでメディア様の広告収益の拡大を行う。
※2024年7月22日、米GoogleがChromeにおけるサードパーティクッキー廃止の撤回を発表しましたが、本セミナーはその前の6月26日に開催しております。
株式会社プラットフォーム・ワンについて
2024年6月26日に開催した、第9回オンラインセミナー『迫るポストクッキー時代に向けて媒体社が取るべき対策とは』。冒頭で岩木氏は、自身が所属する株式会社プラットフォーム・ワンについて紹介しました。同社は博報堂グループに属しており、2024年にデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)と株式会社アイレップの合弁により生まれた株式会社Hakuhodo DY ONEの傘下にあります。
プラットフォーム・ワンは、博報堂グループ内で主に運用型広告のマネタイズを担当しており、岩木氏はその分野の専門家として登壇しました。また、同氏は親会社であるHakuhodo DY ONEの業務にも携わっており、広告運用やサイト制作など幅広いサービスを提供していることにも触れ、グループ全体でのサービス力をアピールしました。
運用型広告について
まず岩木氏は、運用型広告の基本的な仕組みを説明しました。
広告収益を得る方法には「純広告」と「運用型広告」の2つの手法があり、純広告は特定の広告主から直接案件を受け、収益性が高いとされています。岩木氏は「純広告は広告主から指名を受けて、一定の期間にわたって配信されるため、1案件あたりの収益性が高いのが大きなメリットです」と解説。しかし、市場全体で純広告の予算は縮小しており、「常に純広告を確保できるわけではない」と指摘しました。
これに対して、プラットフォーム・ワンが提供する運用型広告は、広告案件を自動で配信する仕組みです。岩木氏は「運用型広告の最大のメリットは、広告案件を取りに行く必要がなく、自動で配信される点です」と説明しました。運用型広告はユーザーの閲覧履歴や属性に基づいて、最適な広告がリアルタイムでオークション形式で配信されます。
岩木氏は運用型広告について、「自動取引のため、どの広告が表示されるかを媒体社側が把握することはできません」とそのデメリットに触れつつも、ターゲットに最適な広告が表示されるため効果的な収益化が可能であると強調。「ユーザーごとに最も適した広告が配信されるため、広告主から求められている配信手法です」と結論づけました。
また、岩木氏はプラットフォーム・ワンが提供するSSP(サプライサイドプラットフォーム)「YieldOne」にも触れ、「国内外4,000以上の媒体社に導入されており、博報堂グループのネットワークを活かして高単価な広告案件を提供できるのが強みです」と説明しました。
ポストクッキーについて
続いて岩木氏は、ポストクッキー時代の広告運用について解説しました。クッキー(Cookie)とは、ユーザーの性別や年齢、閲覧履歴などの情報を記録する仕組みであり、これまで運用型広告のターゲティングに利用されてきました。しかし、すでにApple社のSafariブラウザでは複数サイトをまたがるクッキーの利用(サードパーティクッキー)が規制されており、2025年以降にはGoogle社のChromeブラウザでも同様の規制が始まる予定です。
岩木氏は、「サードパーティクッキーを使ったターゲティングは運用型広告の大きなメリットでしたが、今後はその利用が難しくなります」と現状を説明しました。これにより、広告運用における大きな変化が予想される中、企業は対応策を考える必要があると強調しました。
特に、Safariの規制がすでに収益に影響を及ぼしている点についても触れました。「国内のモバイルブラウザの約65%がSafariを使用していますが、このブラウザではクッキーを使った運用型広告が規制されています。そのため現在、ターゲティング精度を活かした運用型広告の多くは、残りの3割を占めるChromeに依存している状況です」と岩木氏は述べました。
さらに、2025年以降Chromeでもクッキー規制が導入されれば、「現状のままでは、ターゲティング広告による収益がほぼなくなってしまう」と、将来のリスクを警告しました。この規制が広告業界に与える影響は非常に大きく、今後は新たなアプローチが求められるとしています。
今後取るべき対策について
ポストクッキー時代における広告運用の現状を踏まえ、岩木氏は今後の対策について語りました。「クッキーの規制が進行中で、すでにSafariではマネタイズが難しく、来年以降はChromeでも同様の規制が始まります。この現状をどう乗り越えるかが重要です」と述べ、企業が取るべき具体的なステップを紹介しました。
ポストクッキー時代への対策
岩木氏は、「ポストクッキー時代に対応するためには、3つの対策が有効です」として、次の3つの軸を挙げました。
- 共通IDソリューションの活用
- PMPの強化
- インストリーム動画広告の活用
1. 共通IDソリューション
「クッキーが規制される背景には、個人情報保護の懸念がありますが、共通IDソリューションを活用すれば、個人情報が保護された形でターゲティングを行うことが可能です」と岩木氏は説明しました。このソリューションには、LiveRampやAudienceOne ID、ID5などがあり、これらを使えばクッキーに代わる形で広告運用が可能になります。
「このIDソリューションによって、現状の収益を維持し、さらにはSafariブラウザでも新たにマネタイズが実現するのです」と岩木氏は強調しました。Hakuhodo DY ONEグループではこの共通IDソリューションの導入を無償で支援しており、実装面やプライバシーポリシーの変更などの具体的な作業もサポートしています。
2. PMPの強化
次に岩木氏は、通常の運用型広告よりも高単価な取引手法であるPMP(プライベートマーケットプレイス)について触れました。「PMPは、純広告と運用型広告のいいとこ取りをした配信手法です」と岩木氏。広告主を指定した上で運用型広告のようにターゲティング配信できることから「ターゲティングが可能な純広告」とイメージできるこのPMPも、共通IDソリューションを活用することで引き続き効果的に運用できると述べました。
「博報堂グループとしても、ラグジュアリーブランドをはじめとする多くのクライアントに対し、共通IDを使ったPMP提案を進めています」と、今後の見通しを示しました。
3. インストリーム動画広告の活用
最後に、成長市場である動画広告について岩木氏は触れました。「動画広告市場は年々拡大しており、インストリーム動画広告は非常に有望です」と説明し、自社動画コンテンツを利用して収益を拡大する方法を紹介しました。たとえばYouTubeチャンネル等で展開している動画コンテンツがあれば、その動画を自社サイト上に直接置いて、その再生前や再生中に動画広告を流すといった仕組みが簡単に実現できるということです。
その上で岩木氏は「もし自社で動画コンテンツがない場合でも、我々が提供する動画コンテンツを活用して、動画広告の成長市場に参入することが可能です」と提案しました。
まとめ
最後に岩木氏は、クッキーに代わるターゲティング手法である共通IDソリューションを活用することで、運用型広告の収益を維持・向上できると強調しました。
「すでに広告枠をお持ちの方には、さらに収益を向上させるためのソリューションをご提案できます。また、まだ広告枠を設置されていない媒体社に対しても、広告枠の設計や最適な位置・サイズのご提案が可能です」と述べた岩木氏は、プラットフォーム・ワンのコンサルティングサービスについて説明しました。
「まず、サイトの運用方針や目指す広告収益をお伺いし、そこから適切なプランを提案します。その後も何かひとつのソリューションを入れたら終わりではなく、さらなる収益向上を目指し継続的にサポートさせていただきます」と、伴走型のサービスであることをアピールしています。
さらに「実際にリボルバーと協力して広告収益を上昇させたエンタメ系サイトの事例もあります」と実績を紹介して、今回のセミナーを締めくくりました。