毎月第3木曜日の夜に、THE FACTORYで行う少人数(原則定員10名)のワークショップ「Workshop@THE FACTORY」。
第8回は、スポーツの総合メディアを2017年6月に公開されたばかりの、ベースボール・マガジン社 執行役員 樋口 幸也氏をお迎えしました。

dinoで パブリッシャーの、パブリッシャーによる、パブリッシャーのためのデジタルメディアビジネスを支援(小川@リボルバー)

今回のゲスト講師である樋口さんはベースボール・マガジン社の総合メディアサイト「ベースボール・マガジン社WEB」の立ち上げと運営を担当なさっています。

そのプラットフォームとして採用いただいたのが、リボルバーが提供するパブリッシャー向けメディアクラウドサービス dino です。

「我々は出版社、テレビ局などのマスメディア、およびコンテンツマーケティングのハブとして機能するオウンドメディアを運営したい、パブリッシャーのためのトータルソリューションを提供しています」と、ワークショップのホストであり、リボルバーのCEOである小川浩が、まず自社のサービスを紹介して、ワークショップの口火を切りました。

「我々は、メディアを構築し、運営したいお客様に、特別な知識も不要で非常にリーズナブルなコストでスタートできるメディアCMS”dino”を提供すると同時に、自社メディア内で(スポンサードコンテンツやネイティブアドと呼ばれる)広告展開を可能にしたり、トラフィックを増やすためのお手伝いをしています」と小川は説明しました。

画像: dinoで パブリッシャーの、パブリッシャーによる、パブリッシャーのためのデジタルメディアビジネスを支援(小川@リボルバー)

2017年6月20日に「ベースボール・マガジン社WEB」をオープン(樋口氏)

小川の話に続き、樋口さんのプレゼンテーションが始まりました。
樋口さんは、dinoを使うことで、以下の3つのメリットがあったと話しました。

1) 経費を抑える
2) だれでも投稿が簡単、だれでも投稿できる
3) 拡張性

1)の経費の件について、樋口さんは「(dinoは)並行して運営しているメディアと比べて圧倒的に低コスト」と語り、こんなに安くていいのかな、と笑いました。

ベースボール・マガジン社には、他にSportsClickという総合スポーツサイトがあり、樋口さんはその運営コストをカバーすることの難しさに直面していたといいます。

「(2017年の)2月に編集局から営業局に異動したことをきっかけに、Webメディアを使って収益を上げていくことに専念できるようになった」と樋口さん。「そこで新たに運営コストを下げつつも、より運営しやすく、お金を生むことができるメディアを作ろうと計画した」

それが、6月20日にオープンした「ベースボール・マガジン社WEB」でした。

「dinoは、スマホでも投稿できるしブログのように、いやブログ以上に簡単な操作で記事を投稿できる。つまり当初の問題点と思っていた 2) のだれでも投稿が簡単、だれでも投稿できる、という条件をクリアしていた」と樋口さんは話しました。さらに樋口さんの計画では総合メディアを作ったのちに、逆に改めて専門性の強い個別メディアへと切り離す可能性もあるのですが「dinoはそのニーズにも標準機能で対応してくれることもありがたい。RSSフィードのインポートやエクスポート、SmartNewsやグノシーなど著名メディアへの配信機能などを含め、3)の拡張性の面でも申し分なかった」と樋口さんは語りました。「とは言っても、まだまだ収益を上げていくには先が遠い状態ですが・・・」

樋口さんが直面した総合メディア構築に対する壁

ベースボール・マガジン社では、総合サイト以外に個別のサイトを運営している編集部があり、それぞれ別の業者に委託していたこともあり「全体像を把握することが難しかった」と樋口さんは振り返りました。

そこで、改めて先行する各メディアの収益性を高めながら、それぞれが発信する情報を統合して、ニュースサイトとしてPVを確立できる、収益の見込みのある媒体を生み出す必要性を認識し、着手したのだといいます。

「しかし、それは簡単な試みではなかった」と樋口さんは話します。「新たな総合メディアを作るにあたり、いくつもの壁にぶち当たった」と言うのです。
特に大きかったのは、社員のITリテラシーの格差や、問題意識の格差であった、と樋口さんは言います。

社員の中には”自分は(紙の)雑誌を作るために入社した”、”だからデジタルメディアはやりたくない”という理由で消極的な態度をとる者もいたと言います。また、そもそも雑誌の売上の低迷をカバーするだけの利益をうめるメディアを作れるのか?という不安もあったとのことです。

しかし、と樋口さん。「悩んでいても埒が明かない。とにかく始めることが重要だと周囲を押し切った」と笑いました。

画像: 樋口さんが直面した総合メディア構築に対する壁

メディアを立ち上げて思ったこと(樋口氏)

Webの世界では「まずやってみる」ことが重要、と樋口さんは指摘します。「とにかく走りながら考える。やってみてわかること、今後やらなければいけないことがみえてくる。社員の意識の統一はあとまわしでした」

画像: メディアを立ち上げて思ったこと(樋口氏)

スタートして2ヶ月が経過したところで、樋口さんは「現時点の結果(トラフィック)は満足しているとも言えるし不満であるとも言える」と振り返ります。「スタートしたてとしては、それなりのPVを稼いだが、想定通りのやり方を徹底していればもっと稼げたはず」

反省点としては、やはり社内の意識統一が成熟していないこと、と樋口さんは言いました。鶏か卵か、という論議になるかもしれませんが、コンテンツをもっと増やしていかなければ、トラフィックの向上は見込めず、もっと記事をアップする人間を増やしていくことが必要であるという印象を持っているそうです。

「コンテンツはすべてネット専用に起している。雑誌のために作ったコンテンツをWebに流すということに、まだまだ社内に抵抗がある。つまりWebにコンテンツを出せば雑誌が売れなくなる、という意識が拭えない。実際には、紙の内容をWebに出し惜しみする理由がないのだけど・・・・。これは徐々に変えていかねばならないと思っているが、いまのところはWebに書きたがらない社員を強制するようなことはしていない」と樋口さん。

今後の課題としては、と樋口さんは言葉を続けます。「出版社として、紙にこだわらなければいけない部分もあるが、プリントからデジタルへの業態変化には臨機応変に対応するべきと考えています。現状はまだネットからの収益はでていないのですが、これもやってみないとわからないことが多かった。」
だから今後は「何よりもまずPVを伸ばす。そのためにはコンテンツの充実が不可欠であり、速報性ではなく、読者に喜んでいただける記事を書くことに専念する」と樋口さんは言いました。

収益源としてアドネットワークに依存することはできない、と樋口さんは話し、「収益最大化のためにもトラフィックの向上は急務ではあるが、それだけでは厳しい」と言いました。

もちろんタイアップ記事などの受注にも乗り出すが、まずはPVとリンクして安定した収益を上げられることを証明することが大事、と樋口さん。「そうすればWebメディアに消極的もしくは懐疑的な社員の気持ちも変わり、積極的に協力してくれるようになるでしょう。とにかくやってみせなければなにもはじまらないのです」と樋口さんは力強く言い切りました。

次回のワークショップは、2017年9月21日を予定しております。詳細は改めてご報告いたします。

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