コンテンツマーケティングやWebメディアをテーマに定期開催している小規模勉強会「Workshop@THE FACTORY」。2020年1月16日に開催された第32回のレポートをお届けします。ゲストは株式会社扶桑社 デジタル統括局デジタル&Web事業部部長兼週刊SPA!副編集長の角田剛士氏。テーマは『出版社が本気でWeb事業をやろうとしたらわかったこと』です。

メディアの運営体制とターゲットに合わせた配信について

では具体的にコンテンツの制作や運営はどのように行なっているのでしょうか。『日刊SPA!』を代表に角田さんに解説してもらいました。

SPA!事業部は全体で約50人。その中で、『日刊SPA!』は専従編集者3名を中心に、『週刊SPA!』の編集者も記事制作を担当。担当ディレクターも加わりコンテンツ制作・配信を行なっているそうです。『女子SPA!』や『bizSPA!フレッシュ』『HBO』の運営は、専従編集者+ディレクターのチームで運営。いずれもSPA!事業部が担っているそうです。

記事は1日2回更新。配信時間は『日刊SPA!』の場合、9:00前後と16:00前後。かつては通勤時間を狙い7:00などに設定していたそうですが、この時間帯は競合メディアの更新数も多いため『日刊SPA!』の記事が埋没してしまう恐れがありました。また、朝はニュースや時事などの記事が読まれる傾向にあり、エンタメ要素が強いSPA!のコンテンツは昼休みや夕方などがユーザーにとって好まれるベストな時間帯なのではといった理由から、現在はこの時間に更新を行うようになった、と角田さんは述べます。これはSPA!系4媒体すべてに採用しているそうです。

一方、主婦をターゲットにした『ESSE online』に関しては、21:00以降に更新しているそうです。世間一般的に主婦たちは、大体の家事を終えたであろう21:00以降に落ち着いてスマホやタブレットを見ることができます。当初は『日刊SPA!』等と同じ時間帯に更新していたところを、この時間帯に記事を更新したところPV数が増加したという実績から、あえて一般的なサラリーマンのゴールデンタイムとずらして更新を行なっているとのことです。

記事の更新時間をターゲットのライフスタイルや特性に合わせることで、PV数の最大化を実現。PV数の伸び悩みを抱えるメディア担当者は、今一度競合メディアの更新時間やターゲットのライフスタイルに即しているか見直してみてはどうでしょうか。

扶桑社がこれから目指したいこと──サイト間誘導

月間でのPV数推移にバラつきがあることはメディアとしては出来るだけ避けたい、と角田さん。時事ネタを中心にしたサイト運営は、ネタの当たりはずれに左右されるため、PV数が安定しないこともあります。

『日刊SPA!』は専門媒体ではないだけに他社メディアの競合数も多い。そのため、競合が取り扱うコンテンツがPV数に大きく影響されるとのこと。競合に勝つためには他社がやらないコンテンツを配信することが重要だと考えていました。そこで『日刊SPA!』でしかないコンテンツ制作に集中したものの、PV数は安定しない傾向だったそう。

現在ではどのメディアで見てもいいようなニュースも取り扱いつつ、SPA!っぽい他社がやらないことも行うというスタンスでコンテンツ制作を行なっているそうです。これが、PV数の底上げに繋がっていると角田さんは述べます。

また、近年の課題として挙げられるのが、1セッションあたりのPV数を上げること。角田さんによるとユーザーの流入元の中でも、短期的な数字は得られるものの、回遊せずに離脱するユーザーが多い流入元があるそうです。そういった流入元に頼らずに、PVを底上げしたいそうです。

扶桑社のサイトに辿り着いたからには、1回に3〜4記事を閲覧してもらい全体PV数を増やして収益を最大化させたい。そこで角田さんが今後実現させていきたいことが、“サイト間誘導”です。扶桑社の中でもPV数を多く稼いでいるのが『日刊SPA!』『女子SPA!』。このようなPVを多く稼いでいるメディアを入り口に、その他の扶桑社のメディアへユーザーを誘導させるという戦略です。

画像: 扶桑社がこれから目指したいこと──サイト間誘導

元々バナーを設置するなどして誘導を図っていたものの、より効果的にユーザーを回遊させたいとの理由から、扶桑社では各メディアにDMPを導入。その結果、Google アナリティクスだけでは見ることのできないより詳細な情報が可視化されたとのことです。DMPから抽出されたデータにより、関心の高いユーザーに向けて自然なかたちで別メディアの関連記事を接触させ、メディア間での回遊率の上昇を目指します。

この戦略を実現させるためには、「複数のメディアを跨いで閲覧しているユーザーがどれくらい被っているかを検証し、誘導する見込みユーザーを抽出する必要があります。もちろん、すべての扶桑社のメディアを繋げる必要はなく、データに基づいてどのようにグルーピングするかが重要」と角田さんは述べました。

ニュース、エンタメ、ライフスタイルと現在多くのメディアが世の中に溢れています。競合に勝つためには、Webマーケティングを日々更新するだけではなく、ユーザー特性を分析し最適な配信・PV数増加に向けた戦略の下トラフィックを最大化させていく必要があります。

まずはユーザーひとりひとりが何に興味があるのか、何の記事を読んでいるのか、月にどれくらいそのメディアにきてくれているのかを徹底的に分析し、ターゲティングすることでメディアでのWeb戦略が見えてくるのではないでしょうか。

リボルバーが開発・提供するパブリッシングプラットフォーム「dino」では、会員登録制のオウンドメディア運営や、その会員情報と連動したメールマーケティングが展開可能です。最先端のコンテンツマーケティングに関心のある方は、ぜひ当社までお問い合わせください。

画像: ディスカッションでは紙媒体からWebへの移行についての考え方や各社での取り組みなど出版社ならではのトークが展開されました!

ディスカッションでは紙媒体からWebへの移行についての考え方や各社での取り組みなど出版社ならではのトークが展開されました!

角田さん、ご参加いただいた皆さま誠にありがとうございました!

次回は2020年3月26日(木)を予定しております。

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