戸谷 忠史
富士山マガジンサービスにて、事業開発グループ メディアプロデュース・ディビジョン シニアマネージャーを務める(2021年1月現在)。印刷会社、電子書籍書店を経て2004年より富士山マガジンサービスにてデジタル雑誌サービスの立ち上げに携わり、現在は雑誌ブランドを活用したさまざまなサービス構築の支援を行なっている。
株式会社富士山マガジンサービス(以下、富士山マガジン)は、雑誌の定期購読に特化したオンライン書店『Fujisan.co.jp』を運営する企業です。取引出版社数は1,500社以上、取扱雑誌数は国内外合わせて10,000誌以上と膨大で、同サイトにはあらゆるジャンルの雑誌が集結しています。
今回講師としてお越しいただいたのは、同社事業開発グループにて、定期購読を活用した雑誌ブランドのサービス構築支援や運営サポートを行う戸谷忠史さん。『雑誌メディアの取り組み事例と今後の動向 ~情報コンテンツからファンサービスへ~』と題し、今後の雑誌メディアのあり方をお話しいただきました。
メディアと定期購読者をつなぐ新たなサービス展開
今回のテーマにある「情報コンテンツからファンサービスへ」。ここには、雑誌の定期購読が大きく関わってきます。富士山マガジンが展開するファンサービスの事例の前に、まず定期購読とは何かを解説していただきました。
定期購読とは
1年や半年など期間を決めて購読契約することで、書店に行かなくても手元に本が届く。これが定期購読です。
ここで注目したいのは定期購読者への付加サービス。単純に本が届くだけではなく、都度購入するよりも金額が安くなったり、イベント参加の優待があったり、購読者専用のプレゼントがあったりと、定期購読者には出版社ごとに多くの特典が用意されています。
なぜこれほど定期購読者は優遇されるのでしょうか?
定期購読は未来への先行投資
化粧品や食品といった既製品の定期購入者と雑誌の定期購読者は、同じように見えても意味合いが違います。雑誌は手元に届いてページをめくるまで、どんな内容が書いてあるのか分からない……つまり定期購読者とは、雑誌が持つ世界観に共感し、雑誌の未来を期待して先行投資をしてくれている人です。
雑誌メディアにとってこれほどありがたい存在はいません。
戸谷さんは、一般読者が「ファン」だとすれば、定期購読者は「超ファン」であるとし、今後の雑誌メディアは超ファンの獲得とサービス提供による繋がりの強化が課題であるといいます。
周辺サービスの拡充でファンとの繋がりを強固なものに
では、「超ファン」との繋がり強化にはどのような施策が必要になるのでしょうか?
戸谷さんは、定期購読時の割引やプレゼントなどにとどまらず、ファン同士が交流できるリアルイベントや、オンラインサロン、雑誌ブランドを活かした物販といった周辺サービスの拡充が重要だといいます。
上図のように周辺サービスを拡充していくと雑誌メディアとユーザーの繋がりが強固になり、1読者のLife Time Value(顧客生涯価値)が向上します。これまで雑誌の販売収益と広告収益の2本柱で成り立っていた出版社も、各サービスによる第3の収益を得ることができるというわけです。
もちろんメリットは収益だけではありません。これまで以上に読者と繋がることができるため定期購読の解約率も減少。読者としても、好きな雑誌からさまざまな恩恵が受けられるため満足度の向上に繋がります。
では、富士山マガジンでは、具体的にどのような施策を行ってきたのでしょうか。ここからはその具体例をご紹介していきます。