中瀨 竜太郎
1975年4月生まれ。千葉県浦安市出身。サンパウロ日本人学校、慶應義塾大学卒業。98年4月より日経BP社でPC誌の編集記者。2005年10月にヤフーに入社し、トップページ編集やトピックス編集を経て、12年9月に個人の執筆者向けプラットフォーム「Yahoo!ニュース – 個人」を立ち上げ。13年11月に共同通信デジタル(一般社団法人共同通信社の100%子会社)に入社。15年4月に共同通信デジタルとヤフーの出資を得て、ノアドット株式会社を設立。
ノアドット株式会社は、デジタルメディア運営で一般的とされてきた「コンテンツ流通経路の開拓」と「マネタイズ」の手法に一石を投じるべく誕生した企業です。同社が展開するサービス『ノアドット』は、多くのWebメディアが課題とする流通拡大とマネタイズを、従来と異なる手法で実現できると今注目を集めています。
講師としてお越しいただいたのは、同社の代表を務める中瀨竜太郎氏。今回は「目を向けるべきはコンテンツよりも『チャネル』 〜情報爆発時代に収益性を上げるには〜」と題し、日本のメディアの軌跡を踏まえながら、これからのデジタルメディアとはどうあるべきか? についてお話いただきました。
例示いただいたのは、鉄道を題材にした趣味性の強いWebメディア3社です。
趣味性の強い鉄道サイトでの運用例
競合メディアとのコラボレーション
まずはコンテンツを届ける「キュレーター」としてノアドットを活用する鉄道ニュースサイト『鉄道プレスネット』の場合です。ここでは、トップページに『外部ニュース』としてノアドットのキュレーション枠を設けているほか、同じニュースをTwitterアカウントでもシェアして拡散しています。
ここで注目したいのはキュレーション元のメディアです。『鉄道プレスネット』では主に新聞社やテレビ局などから自社の特色に合わせたニュース記事を多く集めています。そのキュレーション記事の中に、競合メディアともいえる『鉄道コム』の記事があります。
ひと昔前であれば、競合メディアの記事を自社のチャネルを使って配信することなど考えられませんでした。当然、コンテンツを提供する側(ここでは鉄道コム)も記事提供などしなかったはずです。では、なぜこうしたコラボレーションが実現し、その結果何を得たのでしょうか?
- 鉄道プレスネット(キュレーター)が得たもの
自社では作成できなかった記事を集めることで自社メディアの情報不足を防ぎ、メディアに訪れたユーザーの離脱を回避 - 鉄道コム(コンテンツホルダー)が得たもの
鉄道専門メディアにコンテンツを提供することで、大手流通事業者に提供するよりも関心のある層に読んでもらえる確率が増え、結果的にPVがアップ
窓口はどこであれノアドットを利用している以上、そこで生まれたPVはノアドットが収益化してくるわけですから、ここにデメリットは存在しないわけです。これこそ中瀨さんが言っていたコラボレーションであり、これからのメディアのあるべき形といえます。
メディアの特色を明確にしつつキュレーション
続いてご紹介するのは、コンテンツホルダーとキュレーターのどちらも行う2つのメディア『鉄道チャンネル』と『鉄道コム』です。『鉄道チャンネル』では、トップページにニュースリンクというキュレーション枠を。『鉄道コム』では新聞・放送ニュースというカテゴリーにキュレーション枠を設けています。
どちらもニュースというカテゴリーでキュレーションしているため、同じ記事が出ることもあります。これだけ見ると、『同じようなサイトになってしまうのではないか?』と懸念する方もいるでしょう。しかし、よくよく内容を見ていくと、それぞれのメディアで運営方針が違うことに気がつきます。
鉄道チャンネルは鉄道に関連した観光情報をメインにキュレートするメディアで、鉄道コムは観光情報に限らず、鉄道の運行情報等もキュレートするメディアです。ともにノアドットを利用しているものの、サイトとしての記事編成の方向性が大きく違います。
足りない部分はノアドットのキュレーションで補い、訴求させたい記事はノアドットに格納して配信してもらう。情報を上手く取捨選択しながら、自社メディアの特色を押し出していく。これもノアドットの上手な活用例といえます。
チャネルこそメディアの本質
メディアに迫る危機を知ろう
中瀨さんはこれまでの話を振り返りつつ、改めて各メディアに迫る危機について「※流動性のワナ」という話をしてくれました。 ※元は金融用語ですが、ここでは言葉としての引用で意味はまったく異なります。
多くのメディア運営者は、「自社コンテンツの流通量=メディア力」と思い込んでいます。中瀨さんは「メディアの運営や記者、編集者にとって、自社コンテンツの流通は喜ばしいことであり仕方がないのですが……」と前置きしつつも、それが必ずしもメディア力の向上に繋がるわけではない、と断言します。
そもそも「メディア」というのは「情報伝達の媒介者」という意味で、情報を自らコンテンツ化することだけでなく、誰かが加工したコンテンツをチャネルを通じて読者に媒介する役割も担っています。分かりやすくいえば、テレビの情報番組でYouTubeや雑誌を紹介するようなものです。
ウェブの発展以降は参入障壁が無くなり、誰もがコンテンツを作り誰もがチャネルになれる時代になりました。そうして爆発した情報の波のなかで、ユーザーは限られた時間でできるだけ効率よく、ワンストップで情報を得たいと感じています。
そうなると、自社コンテンツしか取り扱っていないチャネル、Webメディアというのは、どうしてもダイレクトにアクセスしてもらえなくなり、Google検索やYahoo!の関連リンクから誘導してもらうことに依存していく……これは「メディアとして本質的な力を半分失っている状態」だと中瀨さんは言います。
自前のコンテンツを制作せず、すでに存在するコンテンツを集めることに徹して圧倒的な力を持ったGoogleやYahoo! 。まさにこれが「チャネルを通じて読者に直接媒介する力の強さ」を表しており、この力を得ることこそが現在のWebメディアに必要なことなのです。
情報爆発時代のメディアのあり方
メディアはコンテンツを制作するだけでなく、外からも収集しそれらを選別して届けることで、チャネルとしての力を強化していく必要がある。つまり、コンテンツのクリエーションとキュレーションが同時に求められています。
中瀨さんは最後にこう結びます。
「自分たちのウェブサイトに自分たちのコンテンツと一緒に引きこもっているだけではユーザーのニーズには応えられません。メディア同士が手を取り合って、お互いのコンテンツをお互いのチャネルで収益を伴いながら流通しあう関係。それが今の時代のメディアのあり方であり、それを実現するためのツールがノアドットなのです」
dinoなら今すぐにノアドットの利用が可能!
さて、今回ご紹介した「ノアドット」ですが、当社で提供しているパブリッシングプラットフォーム『dino』ならノアドットとのコンテンツ連携も簡単に行えます。dinoご利用中のメディア様であれば、ご要望次第ですぐにでもコンテンツ配信とキュレーションが始められます。
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