人間は知性や教養を身につけるべきだと僕は思います。いろんなことを広く(浅くても)知っている、ということは知的創造の良いきっかけになると思うのです。今回は、どうしても無駄なことをしたがったり、話が長くて周りを困らせてしまう人にうってつけの「オッカムの剃刀」をご紹介します。

世界的ベストセラー『The Intellectual Devotional』→『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』

『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』という本を読んでいます(いい本ですが、タイトル長すぎです)。割と売れてて、ベストセラーランキングにも入っているそうですが、コンセプトは簡単、”1日1ページ5分読むだけで1年後、世界基準の知性が身につく”、というもので、1週間ごとに、(月曜)歴史(火曜)文学(水曜)芸術(木曜)科学(金曜)音楽(土曜)哲学(日曜)宗教の7分野のミニ知識を紹介してくれます。
知っていることも多いわけですが、もちろん知らないことももちろんあります。スマホで(つまりKindleで)読んでいるので、気になったことはすぐに検索できるし、なんなら関連書をAmazonですぐに買うことができます。事実、3冊ほどこの流れで本を買いました(あくまでデジタルですが)。

1日1ページ、とは言ってもスマホで読んでいると1項目3ページくらいになるし、そもそもそれだけだと読み足りないので笑、結果的には一度に3-4項目(つまり3-4日分)は読んでしまいます。たしかに、じっくり読むというよりも、隙間時間にさらっと読むのに適した、実に現代的な本であるのは間違い無いですね。

ただし、原題は『The Intellectual Devotional』(直訳すると”知的な祈祷書” or ”知性の祈祷書”)。実に知的なタイトルですが、邦訳が長すぎる。正直に言うとダサいです。

せっかくコンパクトで隙間時間に入手できる知的なヒント集なのに、タイトルが説明調すぎて台無しです。もちろん『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』と言われれば、そのまま中身をきっちり説明していてわかりやすいのですが、友達にこの本面白いよ、と説明するときには難儀するし、なによりなんだか美しくないし、バカっぽい本になってしまうのが残念です。
(結果として売れているので、タイトルを考えた方の勝利と言えるし、マーケティング的には正しかったのは間違いないですが)

オッカムの剃刀、ご存じですか??

本書では、各項目の最後にさらに豆知識(真の意味のTipsですね)が置かれているのですが、第12週第6日(土)「中世哲学」の項目の豆知識に”オッカムの剃刀”の話がありました。

オッカムの剃刀とは、簡単に言うと理論はできるだけ簡潔であるべきだ、という意味です。

オッカムの剃刀(オッカムのかみそり、英: Occam's razor、Ockham's razor)とは、「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」とする指針。もともとスコラ哲学にあり、14世紀の哲学者・神学者のオッカムが多用したことで有名になった。様々なバリエーションがあるが、20世紀にはその妥当性を巡って科学界で議論が生じた。「剃刀」という言葉は、説明に不要な存在を切り落とすことを比喩しており、そのためオッカムの剃刀は思考節約の原理[2]や思考節約の法則、思考経済の法則とも呼ばれる。またケチの原理と呼ばれることもある。

短ければ短いほどいい、とは言いません。
必要ならば言葉を尽くして説明するべきだし、言葉が足りなくて他者に理解してもらえない人は世の中にごまんといますから。

ただし、必要十分な情報はあるのに、余計な装飾(虚飾)や空虚な言葉を追加すれば、それは冗長極まりません。オッカムの剃刀とは、そういう無駄を省いてコンパクトにせよ、という戒めです。

日本でいえば俳句(17文字)は、まず短歌(31文字)が生まれて、それをもっと省略して作られた、コンパクトさの極み、世界最短の定型詩です。オッカムの剃刀が使われることによって生まれた文芸の好例と言えると思います。

とはいえ、コンパクトさ、シンプルさを保つのは本当に難しいです。どうしても言葉を足したり、装飾を加えたほうがわかりやすく伝えやすいと思ってしまって、実際そうしてしまうんですね、人は。

『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』では、「世界の教養365」なら原題の『The Intellectual Devotional』にやや近いですね。『The Intellectual Devotional』(”知的な祈祷書” or ”知性の祈祷書”)が持つエレガントで神聖な響きはないですが、キリスト教圏ではない日本人にとって祈祷書というのは身近でなさすぎて、その意味がなすところをキャッチできないですし。

そして、ちょっと長めですが「読むだけで身につく世界の教養365」だともう少しいい気がします。でも、1日1ページ読むだけで、と書いた方がインパクトが強いぞ!と思って、付け足されたのでしょう。
結果として、確かにこの本のコンセプトを明確にして、売れそうな感じになりました(事実売れてます)。

このように、本来はコンパクトで十分意味を為す言葉や理論を、もっとわかりやすくしたいという一種の親切心もしくは商売っ気が、どんどん何かを付け足していって冗長にしてしまうことは、ほんとうによくあることなんですね。シンプルさを保つのは本当に難しいことです。一種のエントロピーの法則とも言えるかもしれません。

事実、フランチャイズする過程で、多くの店舗は勝手に商品を増やしたり、ナイフやフォークを提供してしまったりと、(ファストフードの概念にまだ慣れていない)お客様の要望に応えようとするあまりに効率的でシンプルなシステムを破綻させてしまうことがよくありました。
効率的なシステムを維持するためには、どんなことがあってもルールを徹底しなければなりませんが、人は時として目先の利益や人情に流され、ついルールを破ってしまう。それをマクドナルド兄弟はよく知っていたのです。

オッカムの剃刀タイムのススメ

繰り返しますが、シンプルさを保つのは本当に難しい。常に同じようにいようとすることも難しいです。どうしても慣れてくるというか飽きてくるんでしょうか、なにか工夫を付け足したくなる。

お客様がそうおっしゃっているから、そのほうが売れるから、説明しやすいから、という具合で、人も企業もどんどん何かを付け加えてシンプルさを壊そうとしてしまうんです。
例えば、Appleでいえば、せっかくスティーブ・ジョブスが商品点数を4つまで減らしたのに、いまではiPhone一つとってもiPhone X,iPhone 8, iPhone 7, iPhone 6s, iPhone SEと、同時期に5種類のiPhoneを売り出しています。また、ジョブスが大嫌いだったはずのスタイラス(ペン型デバイス)もいまではApple Pencilとしてしらっと売られていますね。

画像: Steve Jobs: "Who wants a stylus?" - Apple - Steve Jobs at Macworld 2007 in San Francisco youtu.be

Steve Jobs: "Who wants a stylus?" - Apple - Steve Jobs at Macworld 2007 in San Francisco

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こんなとき、僕は思うのです。オッカムの剃刀をたまには使えよと。

オッカムの剃刀を使う時間、を週に一度くらいカレンダーに入れて、無駄や冗長な事柄が自分たちの日常に潜んでいないか、チェックするというのも必要なことなんじゃないかな、と思っています。

いや、そうだ。
いまからでも自分のカレンダーに「オッカムの剃刀タイム」を入れよう。うん、そうしよう。

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