あけましておめでとうございます。2019年は米中貿易摩擦やBREXIT(ブレグジット)、そして我が国内では平成から新元号への変更と、市況を左右しそうな事項が数多くありますね。
企業は生き残りを賭けて必死なわけですが、その中でも多くの識者がD2Cというコンセプトに注目しているようです。D2C(Direct to Consumer)、ご存じですか?

D2C(Direct to Consumer)とは

D2Cを直訳すると、「消費者に対して直接商品を販売するモデル」ということになります。多くはメーカーが消費者に対して直販することを指しますが、狭義ではメーカーが自社ECサイトで消費者に直接商品を販売することを意味しています。

日経新聞の定義では以下のようになります。

実店舗を持たずネット限定で商品を販売するビジネス形態。中間業者や店舗の運営費用を削減して質の高い商品を手ごろな価格で提供する。インスタグラムなどSNSを駆使し、最小限の広告費用でブランドの認知度を高めている。米国で約5年前から始まり、日本でもここ2年でD2Cをうたうブランドが増えてきている。

最近台頭が著しいD2C企業の例をあげると、ファッション・アパレル分野に集中しているようです。

アパレル業界は比較的原価が低いので、小資本で参入しやすく、スタートアップが入り込みやすい土壌ではあります。だからというわけでもないでしょうが、革新的なビジネスモデルが生まれやすい業界です。

例えば SPAやファストファッション

自ら企画、製造した商品を自力で直接販売するという意味では、SPA(Speciality Store Retailer of Private label Apparel)はD2Cにかなり近いニュアンスがあります。逆言うと、D2CにはSPAの特徴に加えて、さらに”リアル店舗を持たずに自社運営のECサイト上でのみ販売することに特化したコンセプト、と言えそうです。

そして、SPAにしても、そのオンライン版と言えるD2Cにしても、消費者と直接エンゲージメントを醸成していくため≒中間業者を排していくため、自ら市場のニーズやトレンドを知り、分析していく(データ収集・活用していく)ことができるという利点があるし、当然利益率を改善できるわけです。
ZARAやH&MなどのいわゆるファストファッションがすべからくSPAであるのも、そこに理由があるし、さらにいうと、現時点(2019年1月時点)で成功例として知られるD2C企業にアパレルが多いのも、SPAとの相似を考えれば合点がいくはずです。

捲土重来的にD2C実現を狙う企業たち

僕の最初のキャリアは商社なのですが、(昭和から平成に移り変わる時期に起きた)バブル崩壊による不況に苦しむメーカーが、商社の介入を嫌忌して国内国外問わず直接顧客と取引しようとしたために、商社冬の時代などと言われていたことを思い出します。
(実際には商社は仲介ビジネスから脱して、新規事業投資を積極的に行うことによって、さらなる成長を遂げたのですが)

そして、インターネットが普及し始めると、当然企業は自社ECに取り組み、さらに顧客との直接取引の成長を目指すようになります。商社のみならず、いわゆる中間業者受難の時代の始まり、というわけです。

ところが実際には、国内では楽天やYahoo!あるいはZOZOTOWNらが、世界的に見るとAmazon.comのような巨大プラットフォームがメーカーと消費者と間に介入してしまい、直接取引というメーカーの悲願は敢えなく潰えてしまいます。

同時に広告ビジネスにおいてはGoogleとFacebookによる寡占(二者による独占なので、Duopoly=複占という言い方がされています)が続いており、さらにAmazonの参入が話題になっています。

このままでは、多くのメーカーにとっては座して死を待つのみ!という感じでしたが、モバイルとソーシャルの普及、そしてコンテンツマーケティングというコンセプトの認知がちょっと事情を変えることになりました。

SPAのアイデアに従い、自社で企画した商品を自社の店舗=ECサイトで販売するD2Cモデルは、PCx検索=インターネットの時代にはプラットフォームが持つ巨大な集客力に圧倒されてしまいましたが、モバイルxSNSの時代では情報発信力があれば個人でもブランドを確立しやすい時代になっています。特に双方向的な関係性をあまり持たないInstagramでは、FacebookやTwitter以上に発信者(インフルエンサー)と受信者(フォロワー)という関係を作りやすく、強いコンテンツを持つユーザーは個人であっても強力なブランドを作りやすくなっています。
(もちろん発信するに足る”コンテンツ”があれば、ですが)

実際、Instagramでは数十万人のフォロワーを持つユーザーはざらにいて、ソーシャル時代のシンデレラを数多く生んでいます。

こうしたブランド力を持つ個人の台頭は、FacebookやTwitter、Instagram、YouTubeなどのプラットフォームに頼っていること自体はあまり変わらないかもしれませんが、広告ではなく自身が発信するコンテンツそのもので勝負している点は注目すべきです。
個人ができるなら、自分たちにもできるかもしれない。良い商品を持ちながらプラットフォームに依存せざるを得なかった小さなブランドたちは数多く台頭してきたインフルエンサーたちを利用するだけでなく、彼らから多くのことを学び始めたわけです。
消費者にアピールすべき”ストーリー”を考案して、それを元に有益なコンテンツを製作し続け、さらにコンテンツの集積場所としてのオウンドメディア、コンテンツの拡散ツールとしてのSNS、発生させたトラフィックの換金場所としてのECサイトを用意することで、D2Cは成立するかもしれない。
そんな仮説が共通認識となって、多くの業界に広まってきていると言えます。
消費者との直接取引とエンゲージメントの樹立をなんどもトライしては失敗してきた様々な業界が、多少疑心暗鬼ではありながらも、再び(三度、もしくはそれ以上)捲土重来を期してD2Cに取り組み始めているのです。

逆に言うと、今取り組まないと手遅れになると気づいた、と言うべきかもしれません。

(このブログで度々超成功モデル事例としてあげているNetflixも、いまでは自社コンテンツを大量に作りながら直接配信しているわけで、立派なD2C企業と言えますね)

サブスクリプションも典型的なD2C

有望なD2C企業にはアパレル型が多いと書きましたが、例えばメディアでも強力なD2C企業は育ち始めています。例えば電子版の成功で注目される日経新聞もそうですし、NYタイムズやワシントンポストなどの読者への有料課金によるサブスクリプションメディア化を目指す企業らがそれです。

リボルバーの主要顧客である出版社もまたそうです。これまでは日販やトーハンなどの取次業者やAmazonらに依存してきた彼らは、広告メディアとしてのWebマガジンの運営に乗り出し、いまではコンテンツの有料化や特典提供を設計することによる、課金モデルへの参入(そもそも雑誌や書籍は有料ですから、原点回帰と言えます)に取り組み始めています。

ある意味定期購読というのは直接読者との出版社が接点を持つことですが、繰り返しになりますがD2C とは、メーカーが直接ECサイトを使って消費者に商品を買っていただくことですから、D2Cに即した定期購読とはあくまで出版社が自社のECサイトを使って読者に雑誌・書籍を届けなくてはなりません。

いまやECサイトを作るのも、オウンドメディアを作るのも、昔とは比較にならないくらい低コストで実現できるようになりました。

コンテンツマーケティングは、モバイルxソーシャル時代に生まれたマーケティング手法です。そしてこれらを背景に、D2C化の加速がしやすい状況になってきている。これらはすべてリンクして動いている、僕はそう考えています。

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