最近またTwitterが日本国内でテレビCMをしていますが、2点ほど違和感がありました。

それはまず、Twitterとはなんぞや?という問い(どんなサービスや商品でも必ず最初に定義しなければならない、根源的な質問)に対する答えが、本CMではキャッチコピー「あなたの知りたい今がある。」に込められているとおり、Yahoo!知恵袋(Yahoo! JAPANが運営する、電子掲示板上で参加者同士が知識や知恵を教え合うナレッジコミュニティ、知識検索サービス)のような、ユーザー同士の相互扶助的、あるいは集合知的な情報共有サービスとして描かれていることです。

CMでは、母親の留守に、泣き止まない赤ん坊に手を焼く若いお父さんが登場します。
彼は赤ちゃんが泣き止む方法をTwitterを使って検索するのですが、ほどなく多くの他のユーザーがさまざまな方法をツイートしてくれます。

曰く、ビニール袋をガサガサする、曰く掃除機やドライヤーの音を聴かせる、などなどです。
数多くのツイートによる様々なサジェスチョンを試した父親は、ようやく赤ちゃんを泣き止ませることに成功し、ホッとする、というのがこのTV CMのストーリーになります。

画像: 【CM】Twitter ツイッター youtu.be

【CM】Twitter ツイッター

youtu.be

CMのクリエイティブについては特に文句はない、と言うよりもよくできていると思いますが、Twitterとはなにか?というブランディング、あるいはポジショニングをするうえで、Twitter Japanは、Twitterを集合知型の検索エンジンとして定着させようとしているのか?ととても気になりました。

Twitterが日本に上陸して既に数年が経ち、創業当時からを知っている僕としては、Twitterとは自分のステイタス(今、自分が何をしているか)を短文でリアルタイムで告知するサービスであって、誰かに問いかけたり回答を求めたりするのは、便利な利用法ではあっても、本質的な使い方ではないと思っていました。それはFacebookや、その他の伝統的なソーシャルネットワーク、もしくはコミュニティの本分であって、Twitterはコミュニケーションのツールというよりも、ユーザーが自分と自分の周囲に起きていること、すなわちステイタスをオンラインで共有する、どちらかというとニュースの発信ツールであると思っていたのです。

もちろん消費者向けのサービスである以上、現在Twitterを主に利用しているヘビーユーザーに合わせてスタイルやポジションを変えていけばいいわけだし、Twitter Japanが監修したCMなので「自分たちはこういうサービスだ」という主張なわけだから、それに異議を唱えるつもりはありません。

ただ、いまのTwitterはそういうサービスなんだ、とちょっと意外な印象を受けた、ということだけです。それは昔の恋人が、昔とは違う生き方をしていたときに受ける違和感と同じようなものかもしれません。

ちなみにもう一つの違和感は、Twitter の発音です。

僕はTwitterが創業されて以来、今日に至るまで、Twitterを、

ツイッター

と発音しています。ツイッターというように、ツイのところに強いアクセントを置くのです。

僕だけではない、僕の周囲の人々(ということはIT系の企業や業界で働く人々)はみな、そう発音しています。

ところが、このCMでは

イッタ

と発音しています。ツイッターというように、後ろに強いアクセントを置いているのです。
ちょうど、彼氏(彼女でも)の発音のようで、昭和世代はほぼ例外なく前にアクセント置いてカレシ、と発音するでしょうが、平成世代はカレシ と発音するのと同じです。

なんだよそれ、と僕は思いましたが、考えてみれば、今のTwitterは、十代を中心とした若年層に強くアピールするサービスです。その意味では、若い世代の発音に合わせて”変えた”ということかもしれません。

繰り返しますが、Twitterは僕が作ったものでもないし僕たちが提供しているサービスでもありませんから、Twitter JapanもしくはTwitter社が考えるブランディングやポジショニングでPRしていけばいい。そのことに文句をつけるつもりはありません。

しかし、少なくとも言えることは比較的ギークとか、IT寄りのユーザーが多かったきらいのあるTwitterが、いまでは完全に”普通の”消費者、若い世代に向けてのサービスになった、もしくはそうなろうとしている、そのことを明確に見せつけられたのが、このCMを見ての僕の感想だということです。

ウチのサービス(または、商品や会社)はなんなのか。この問いに一言で答えることができることは大事だし、それを広める努力は重要です。
そして、自分のサービス(または、商品や会社)をテキストやロゴで示すと同時に、オーラルで(声に出して)どう発音させるか、してもらうかを考えたり決めていくことも大事です。それは、誰が客で誰が客でないかを明確に区分けすることでもあるのですから。

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