世界最高の起業家、スティーブ・ジョブズ亡き後、多くのビジネスパーソンの尊敬を集めるヴィジョナリー といえば、イーロン・マスクでしょう。
彼の型破りな天才ぶりに傾倒する人は実に多いですが、彼の持つすごいエピソードを2つほど紹介しましょう。

イーロン・マスクをご存じでしょうか。起業家であれば、ほぼ誰もが知っているでしょうし、EV(電気自動車)のテスラや、民間宇宙開発企業のスペースXの創業者兼CEOであるといえば、ああ!あの人かと膝を叩く人も多いでしょう。
荒唐無稽とも思われるような奇抜なアイデアや、ずば抜けた行動力、時として多くの人の誤解を招きかねない歯に絹着せない発言などで話題を呼ぶ人ですが、実は非常にシンプルかつ理にかなったロジックを展開する、実にわかりやすい思想家であると僕は思っています。

https://twitter.com/elonmusk

テスラを興した理由は、CO2ガスの発生を20%削減できるから・・・

イーロン・マスクという人は、奔放または過激ともとれる発言で話題を集める、ある意味失言が多い人でもあるので、ちょっと誤解されがちですが、実はとてもシンプルかつ強固な思想家であり、同時に壮大な目的に達するための戦略をひたすら遂行する意志の人です。
そして、その意思を表現することに非常に長けた人だと僕は思っています。

数年前になりますが、EV(電気自動車)がなぜ必要なのかを説く彼のインタビューをみていた僕は、彼が示した EV普及を目指すための基本的な考え方と、その発言自体に心から痺れたのです。
インタビュアーは、イーロン・マスクに対して、「あなたはなぜテスラを起こし、既存の自動車産業に挑戦するのか?」と質問したのですが、イーロンはそれは地球温暖化を止める、もしくは遅らせるためだ、と即座に回答し、その根拠を以下のように述べたのです。

現代の自動車の多くは内燃機関つまりエンジンによって、個々の自動車が個別に発電して(エネルギーを発生させて)いる。この方式を分散型と呼ぶ。
電気自動車は内燃機関の代わりにモーターとバッテリーを持ち、発電(エネルギーの発生)は発電所に集約させている。この方式を中央集約型と呼ぶ。
分散型の発電に比べると、中央集約型の発電は20%効率がいい。つまり、EVを普及させるということは、発電行為によるCO2ガスを20%減らすということであり、地球温暖化を食い止める行為となる、というのがイーロン・マスクの説明なのでした。

この試算がどこまでの要素を含んでいるかは検証していません。だから彼の発言をそのまま鵜呑みにしようと言っているわけではありませんが、実にわかりやすく、論理的です。20%くらいの削減、大したことないじゃないか、抜本的な解決案じゃないじゃないか?と皮肉めいた態度をとる人もいるでしょうが、自分がやれることをやることが重要だし、そもそもEV開発をしている企業のトップで、自分たちの行為が環境問題にどのくらい寄与するのだろうかちゃんと考えていた人は少ないんじゃないかと思います。少なくとも、あれこれ考えて、簡潔な結論にたどり着くことができないままこんがらがってしまっているような気がします。
事業や政治を行うリーダーは、すべからくこういうダイレクトでシンプルかつ明快な論理で、周囲を動かすことが大事だと僕は感じました。

再利用できるロケットで宇宙旅行の低価格化を目指す

同じようにダイレクトでシンプルかつ明快な論理の例が、スペースXの創業理由です。
今年(2020年)になって、スペースXが初めて有人宇宙船の打ち上げに成功したニュースが世界中で話題になりましたが、彼らが凄いのは、NASAをはじめとする国家機関の宇宙ロケット打ち上げの費用よりはるかに安い金額でこれを実現していることです。
そんな低コストのロケット打ち上げを実現したのは、再利用できるロケットをつくる、ということでした。

簡単にいうと、宇宙ロケットは基本的に使い捨てです。一度打ち上げたらそれで終わり。
スペースXが作っているロケットは、打ち上げた後に 壊れることなく着陸するので、再度打ち上げに使えます。何回再利用できるのかは知りませんが、打ち上げ一回ごとに新しいロケットを用意するよりは安上がりです。

イーロンは地球環境を守ろうとしつつも、守りきれないと考えているのでしょう、近い将来人類を火星に移民させることを夢見ているらしいです。(その是非はここでは問いません。また、火星を人間が住める惑星に変える方法についてもここでは触れません)
そのためには幾つか障害がありますが、そもそも非常に高額な宇宙有人旅行を少しでも安くすることが先決だとイーロンは考えたのでしょう。そのための方法として、ロケットの再利用を考えた、ということのようです。

だからスペースXは大気圏を離脱して宇宙に飛び出るための実験より先に、打ち上げては垂直着陸させる実験を繰り返しました。もちろんいうは易し行うは難しで、非常に困難がつきまとう開発だったはずですが、実際にスペースXはこれをやり遂げ、そして初の民間企業による有人宇宙船の打ち上げ成功につなげたわけです。

画像: ファルコン9(再利用ロケット)の打ち上げと無人船への垂直着陸 youtu.be

ファルコン9(再利用ロケット)の打ち上げと無人船への垂直着陸

youtu.be

行動するパワーと、周囲を巻き込む熱量が欲しい

どうでしょう。
イーロン・マスクがやっていることはとてつもなく大きな事業ですが、その事業を手がけるためのマイルストーンや差別化のための発想自体はとてもシンプルなものです。

彼は、いつか人類は地球に棲めなくなるかもしれない、と思っている。結果的にはその結末を回避することはできないかもしれないが、時間稼ぎはできるかもしれない、ならば自分がその責を負ってやろうと考えているのでしょう。
EVの普及が実現すれば 人類が地球に棲めないような暗い未来の到来を遅らせることができるかもしれない、だからテスラを創業する。そのうえで、結局は訪れるであろう暗い未来においても人類が生き残れるように、地球外、つまり宇宙への移民計画を実現しなければならない。そしてそのためには、もっと低価格なロケットを作らねばならない。だからスペースXを創業する。

このように、イーロン・マスクの考え方は非常に一貫しているし、ブレイクスルーを行うための論理もシンプルで明快です。もちろんそのためには巨額の資金やリソースが必要になることは疑いないですが、彼は私財を投じることはもちろん、周囲の支援者を巻き込んでいくパワーを遺憾なく発揮するのです。

ここで、一般的な起業家や投資家の行動が儲かるかどうか、という金銭的なモチベーションに応じていると謗るつもりはありません。それを悪いとも良いとも言わない、行動するかどうかが全てだと思うからです。
イーロン・マスクの事業意欲が、地球環境の悪化と それに伴う宇宙への移民の必要 への対策という側面があるからといって、だから凄いとか、スケールが違う(確かにスケールが違うわけですがw)と褒めそやすこともしません。ただ、どんな理由にせよ、断固として行動するそのパワーと、その行動をするうえでの発想力と、それを周囲に説明する能力は本当に凄いと思います。

画像: イーロン・マスクの凄みを伝える2つのエピソード

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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