博報堂アイ・スタジオ 佐藤匠氏 講演
まずはじめに、株式会社博報堂アイ・スタジオの佐藤匠さんにお話しいただきました。
佐藤 匠(さとう たくみ)
株式会社博報堂アイ・スタジオ
ビジネス開発センター 執行役員
2009年より博報堂アイ・スタジオ。 自動車、金融・保険、化粧品など、様々な業種のデジタルコミュニケーションを中心に、大規模なプロモーションの実績多数。2022年より執行役員。2023年度はビジネス開発センター長として、官公庁やBtoB企業、中小企業のDX化を推進。制作プロダクションという領域を超え、DXコンサルやブランディングサポートを行うことで、得意先のビジネスを成功に導くことを目指している。
博報堂アイ・スタジオによる採用活動へのアプローチ
佐藤さんは、まず博報堂アイ・スタジオの概要について紹介しました。丸の内に拠点を置く同社は博報堂DYグループの一員であり、2000年からデジタルを中心にお客様のコミュニケーションをお手伝いしてきた会社です。200名を超えるスペシャリストを擁しており、クリエイティブとテック領域を得意としています。
就活においてはインターネットを介した情報収集がますます一般化しているものの、その検索行動においては企業名を含む検索全体の73%を占めているというデータを提示しました。そのため従来型の採用活動では、エントリーの時点で先入観をもって企業選択をしてしまっているため、良質な母集団を形成することが難しくなっていると佐藤さんは言います。
とはいえ、企業のブランディングの入口として、リクルートサイトが重要であることは間違いありません。同社が手がけたリクルートサイトは多くの学生から支持されており、2021年の採用ホームページ好感度ランキングでは、同着1位で選ばれた2つのサイトが博報堂アイ・スタジオ制作だったとのことです。
伝わるリクルート
博報堂アイ・スタジオではコミュニケーションにおいて、「伝える」ではなく「伝わる」ことを重視している、と佐藤さん。リクルートにおいても相手に理解してもらうことが大切であり、そのためにマーケティングやブランディングの視点からアプローチしているそうです。
実際の流れとしては、まずモチベーションに基づいたターゲット設定を行い、それを元にペルソナを作成し、求職者の体験設計を行います。また、企業の強みや魅力を分析し、その伝え方を工夫します。企業の中にいると気づかない独自の強みにスポットを当て、コピーワークやデザインなどでその魅力を表現するのです。
さらに、コンセプト開発やクリエイティブ・コンテンツの制作を行い、それを活用したプロモーション施策も提案・実施します。某銀行のリクルートサイト制作において、挑戦心を持つ学生をターゲットにしたブランディング戦略が紹介されました。就活生に刺さる言葉をフックとして会社のことを知ってもらうという取り組みが、効果的なアプローチを実現しています。
体験するリクルート
博報堂アイ・スタジオがブランディングにおいてもう一つ大事にしている観点が、「体験」すること。紙やWebサイトで見るだけでなく、実際の体験を通じて企業価値の理解が深まるという考えから、インターンシップや説明会などのイベントではデジタル技術を活用した体験を提案していると佐藤さんはおっしゃいます。具体的には、VRを用いた企業の日常体験やオンラインでのワークショップなどが行われているそうです。
同社における採用活動の実績として佐藤さんが挙げたのが、迷路型採用説明イベント。参加者はチームで協力し、課題を解決しながら実際の業務に近いインターンシップを体験していくのだそうです。このように面白いインターンシップのプログラムは、それだけでもコンテンツとして成立することから、その体験が次の求職者を引き付けるような効果も期待できると佐藤さんは言います。
求職者に企業の魅力や価値を直接感じてもらうことができる「体験」は、リクルートプロモーションにおいて欠かせない要素となっていると言えるでしょう。
体験するリクルート
リクルートの成功には、良いコンテンツやWebサイトを作るだけでなく、それをユーザーに届けることが不可欠です。そのためには、メディア選定を含めた広告戦略の構築が重要視されます。例えば新卒採用では、大学・学部などで絞り込んでピンポイントに狙っていくのが有効とのこと。広くあまねく一般的に広告を出していくよりは、オフラインの広告やエリアを絞っての広告配信を組み合わせて提案することが多いそうです。
採用に企業ブランディングの観点を
採用においては、企業のブランディングも重要な視点となります。結局のところ、知ってもらえない限りそもそも母数を作ることができないからです。採用サイトや就活サイトでは、企業目線ではなく就活者目線で情報を伝えることが重要と語る佐藤さん。「伝えることと伝わることは別だなあっていうのは、よく感じることです」という言葉が印象的でした。
またリクルートのブランディングの改善はその副次的な効果として、インナーモチベーションの向上や、本業でのユーザーコミュニケーションに活用する流れを生むなど、顧客のビジネスによい影響を与えることがあるとして、佐藤さんは話を結びました。