今回は、まず株式会社日立製作所 社会イノベーション事業推進本部 マーケティング・コミュニケーション部 主任の平尾 穂高 氏が情報過多の現代において、あえて詳細を隠し、読者の想像力を掻き立てる表現手法として”見せないメディア”のあり方について語り、そして続いて 従前同様にリボルバーCEOの小川がトリプルメディアに替わるPESOコンセプトについて説明いたしました。
秘すれば花(風姿花伝 by 世阿弥)
平尾 穂高(ひらお・ほたか)
株式会社日立製作所 社会イノベーション事業推進本部 マーケティング・コミュニケーション部 主任。これまで公共向け営業、スマートシティ事業PRを担当。現在は展示会・イベント企画、運営と新規事業立案に向けた各種サポート業務に従事。2016年、資生堂「LINK OF LIFE エイジングは未来だ展」出品参加。建築、アート、テクノロジー、デザインのネットワークを活かし、企業内外の枠を超えたコラボレーションに取り組む。
平尾さんは、現在 日立製作所の社会イノベーション事業推進本部 マーケティング・コミュニケーション部において、主にPRの仕事をされています。生活者の行動履歴や社会インフラの稼働状況といったさまざまなデータを扱う事業において、PRにおいてもWeb読者のアクセス解析を実施してPR計画につなげるなど常にデータ活用を念頭に置いた業務をされています。
ただ、平尾さんとしては、そうしたデータに縛られすぎることによる行き過ぎに対する懸念を、常日頃から感じておられるそうです。そこで、今回のワークショップにおいては、敢えて日本古来の、敢えて見せないことによって人々の『見たい!」を形にする手法についての是非を、参加者とともに考えていきたいと考えた、と語りました。
こうした手法は、例えば隠喩であるとか、透かしであるとか、風刺などと、さまざまな呼び方で知られてきた、と平尾さんは話します。それらはすべて、あえて実体を描かず、読み手の想像力を掻き立てる表現手法であり、古来から日本人が得意とするところだと平尾さんは指摘するのです。
例えば、日本の伝統芸能の一つである能を大成させたとされる室町時代初期の猿楽師 世阿弥は、多くの著書の中でももっとも有名な『風姿花伝』の中で、”秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず”という一節を記しています。
花とは能の本髄(ほんずい)の意味であり、言ってみれば能を鑑賞するうえでの醍醐味となります。世阿弥は秘する、つまり本髄を隠して見せないことによってコンテンツを面白くすることができると言っているわけで、あっさり見せてしまえば興ざめしてしまうだろうと書いています。平尾さんは、この一節を引用して、敢えてネタを見せないからこそ読者の想像力を引き出して、好奇心を掻き立てるのだ、と話します。
世阿弥の他、小説家の谷崎潤一郎の名文や、日本のHip Hopの草創期の第一人者であったスチャダラパーの名曲を引用し、さまざまな分野において功を奏してきた”秘すれば花”の事例を平尾さんは紹介します。
さらに、平尾さんはWebサイトにおいて、この”秘するが花”を実践した例として、以下の二つを挙げました。
平尾さんは、これらがなぜ面白いのか、表現の味わいを説明してくださいましたが、ここでは敢えて説明はせず、実際の事例(サイトと動画)を皆様に見ていただき、感じていただくことで 花を感じていただくことにいたしましょう。
いずれにしても、「見せない」手法を採用するうえで大切なことは“その後”の設計であり、Webサイトの読者を待ち構える店舗設計や、商品そのものの質が問われている、と締めくくりました。
トリプルメディアからPESOコンセプト
続いて小川からは、現代のメディア運営に欠かせないコンテンツマーケティングにおいて、メディアの捉え方は、従来のトリプルメディアではなく、PESOと呼ばれる新しいコンセプトに置き換えられるべき、と指摘しました。
具体的に言うと、PESOコンセプトは、従来のトリプルメディアのEarned Media を機能分解し、PR(パブリシティ)をこれまで通りのEarned Media、ソーシャル(生活者がソーシャルメディア上で拡散した口コミ)をShared Media と呼んで分別したことにより、3つから4つへと変化しています。
同時に、Owned Media (オウンドメディア)を自社運営のメディア、というように即物的に捉えるのではなく、企業側のメッセージを含むコンテンツ(=スポンサードコンテンツorブランデッドコンテンツ)の集積であると捉えているのが、PESOコンセプトの重要なところであると小川は説明しました。
「マスメディア(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)は相対的に影響力を減じており、消費者へのリーチ規模において、インターネットはマスメディアを凌駕した」と小川は指摘します。
この結果、メディアのオーディエンスの嗜好は多様化し、無数のセグメントやグループに非常に細分化されました。だからこそ、PESOの各項目あるいは機能・役割を有機的に組み合わせたプランニングが必要になっている、と小川は主張しました。
セッション後半では参加者全員でのフリーディスカッションがなされ、各員の業務内容や背景を鑑みた活発な議論が成されました。
次回のワークショップは 2017年6月15日 19:00 - からです。
次回のゲスト講師は、DAC メディアソリューション部の西橋 誠 氏。テーマは『データを活用したマネタイズモデルの現状と今後について』です。
ご興味のある方は上記ページをご確認のうえ、ご連絡くださいませ。
定員10名となっておりますので、原則として先着順です。ご興味ある場合は、お早めに申し込みください。