ゲスト講師:
株式会社Groove Gravity 代表取締役 上梨 能寛 氏
清家 直裕
マーケット黎明期からデジタル広告を活用したデジタルマーケティングに従事。経験業界は通信、金融、メーカー、日用品、通販などブランディング系からパフォーマンス系まで幅広く対応。またデジタルパブリッシャーやアドテクノロジー企業在籍経験からProgrammatic Buying領域にも造詣が深く、Programmatic Buying領域にソシューションを組み合わせることで、デジタル広告のサプライチェーンへ効率向上への取り組みも多数実施。2019年度から現職。明治大学法学部法律学科卒業
データドリブンマーケティングとは?
スマートフォンやGPSといったツールやシステムの進化に伴い、Webの世界はますます複雑になってきています。ちょっとした調べ物や買い物など、ごく短い時間でも、Aにアクセスした、Bをクリックした……など、ユーザーの情報は細かく収集されビッグデータとして蓄積されます。こうしたデータをいかに効率よく広告に活用していくか? それが「データドリブンマーケティング(DDM)」です。
データドリブンマーケティング(DDM)
販売実績や顧客情報など、集めたデータを活用することに重点を置いたマーケティング手法。ビッグデータの中から、ビジネスに役立つ情報を抽出し分析。それを広告展開に活用することで、より効果的で適切な運用が可能になるというもの。
運用型広告×DDM
我々が普段何気なく利用しているインターネットには、純広告・記事広告・リスティング広告(検索広告)・ディスプレイ広告・リターゲティング広告・SNS広告・DSP広告など実に多種多様な広告が展開されております。その数はあまりにも多く混乱してしまいそうですが、インターネット広告は、大きく「予約型広告」「運用型広告」の2種類に分けることができるといいます。
予約型広告:期間や金額、掲載面や配信料といった出稿内容があらかじめ決められた広告。配信後はとくにアクションをする必要は無い。
→純広告・記事広告
運用型広告:ユーザーの反応を見ながら、リアルタイムに内容(クリエイティブ)や配信地域、予算、期間、ターゲットを変更・改善していく広告。
→リスティング広告・ディスプレイ広告・リターゲティング広告・SNS広告・DSP広告など
前者はあらかじめ広告内容・出稿金額が決まっているため、配信期間終了までとくになにかアクションを起こす必要はありません。
対して後者の運用型広告は、配信後に随時状況を見ながら入札価格やオーディエンス、クリエイティブの調整を行う必要があるためDDMによる分析がとても重要になってきます。
ここからは清家さんが手掛けた4つの事例をベースにDDMの運用についてご紹介していきます。
CASE1 小売店1
来店・来店率を可視化
これまで不特定多数の人に大きく展開するのが一般的であった広告も、Googleの新機能「来店コンバージョン」を導入することで、よりターゲットを絞った展開が可能になると清家さん。
その良い例としてYouTube広告を使った小売店の例を紹介してくださいました。
来店コンバージョン
ホテルやレストラン、EC未導入のショップなど、来店を重視するビジネスにおいて有効なサービス。Googleのロケーション履歴機能、Googleマップの現在地送信機能などを使い、配信した広告とリアルでの行動を紐づけて効果を推定する。
商圏内のユーザーにのみ広告配信
まず、来店を促したいショップの商圏内に居住しているユーザーを対象にした動画広告をYouTubeなどで配信します。その広告を見たユーザーにはCookie(ユーザー情報)が付与され、ショップの会員IDに紐づけられます。
実際にユーザーが来店した際に、Wi-FiやGPSを活用したGoogleのAIがユーザーを認識し、広告視聴時に入手したデータと情報をリンクさせます。これにより、広告を見た人が実際にどのくらい来たのかを可視化することができます。
上記を店舗ごとに行うことで、配信する広告の有効性などをチューニングし、効率よく運用していくことができるのです。
もちろん会員IDの整備やデータの収集には時間が必要ですが、これまでの実績を見ると導入から約3ヶ月ほどで実店舗への来店者数が上がり、結果的に店舗売り上げも向上したとのことです。
CASE2 小売店2
クリエイティブパターンの量産
ここで紹介いただいたのは、とある自動車ディーラーのケースです。
「週末は〇〇へ」というキャッチコピーを見たことがあるでしょうか。来店促進のための広告ですが、これだけではどこの店舗なのか、何が展示してあるのかが分かりません。自動車ディーラーは基本的に地域密着型であり、わざわざ遠方まで出向いてクルマを購入する……ということは考えられませんので、本来であればメーカー名だけでなく、地域に密着した店舗毎に広告を出すのがベストです。
ただ、数十店、数百店もの地域別広告を出すためには相応のコストが掛かります。そこで活躍するのが、ADKマーケティング・ソリューションズが活用する、「Ad-Lib(アドリブ)」というダイナミッククリエイティブツールです。
300パターン以上のクリエイティブを瞬時に生成
ツールにあらかじめ車種別・地域別の写真やキャッチコピーをアップロードしておくと、「環七〇〇店で試乗受付中!」といった地域別のコピーと、興味に即した車種のビジュアルが掲載されたクリエイティブを自動生成。その数は実に300パターン以上にのぼります。
ユーザーの地域に密着した配信になるため、その効果も絶大です。実際にこの手法で行ったディーラーのケースでは、CTR(クリックレート)が約30倍も向上したそうです。
CASE3 金融
一般ワードの貢献度を可視化
例として紹介いただいたのは金融業界。こちらで利用するのはGoogleの「データドリブンアトリビューション(DDA)」です。
データドリブンアトリビューション(DDA)
商品購入や申込など設定したコンバージョンに至るまでに、ユーザーは複数回の検索を行っているもの。通常はコンバージョン直前の検索で入力されたキーワードにのみ貢献度が割り当てられるが、それ以前の検索キーワードにも貢献度を割り当てることで組み合わせを分析し、ユーザー経路を比較することでコンバージョンに至りやすいクリックパターンを割り出していく。
DDAを活用して展開するのは、リスティング広告。これは検索結果(設定した検索キーワード)に応じて表示される広告のことです。
このリスティング広告のコンバージョンを“口座開設”に設定したとします。
コンバージョンに至るまでには、さまざまなキーワードが入力されクリックされているのですが、これまで主流の運用方法であった「ラストクリックモデル」の場合は、コンバージョン直前のキーワードのみを評価対象としています。そのため、運用側はそれ以前に入力されてきたキーワードは必要がない、キーワードとして登録しても仕方がない……という判断をしてしまいます。
ところがDDAを用いた「データドリブンモデル」の場合、コンバージョンに至るまでに入力された一般キーワード、たとえば「資産運用」や「貯金を増やす」などを“アシストキーワード”として評価し、貢献度を振り分けます。
これによりキーワード選定のバリエーションや組み合わせなどを可視化し、より効果の高い運用が可能になるといいます。
清家さんいわく、CASE1と同様にこちらも長い目で見ることが重要とのこと。これまでの実績では、約2ヶ月ほどの運用で口座獲得数+20%、口座獲得単価は-10%を実現したそうです。