今回はマーケティング的観点から、目から得る情報と耳から得る情報の違いについてと、および若者を重用した方がいいですよ、というアドバイスをお届けします。
Suchmos、正確に発音できますか?
この「VOLT-AGE」、実はNHKがW杯番組のテーマソングに選んだことを最近知ったとはいえ、ちょっと前から知っていて、いい曲だな、シブいな、と思ってました。音の構成が僕には(僕が大好きな)プリンスに共通する部分があるように思えて、かなり響いていたのです。
サーカー中継のテーマソングとしてふさわしいかどうかの論議がなされているようですが、それにはここでは触れません。問題なのは歌っているロックバンド Suchmosのほうです。
片仮名ではサチモス、と書くことは冒頭でバラしてしまったので読めない人はいないでしょうが、これ、どうやって発音するでしょう?
Suchmosの発音の仕方、アクセントはどこに置くでしょう?
どう発音するのが正しいでしょうか?
正解は⑴だそうです。
とはいえ、メンバーの間でもどう発音するか、きちんと決めてなかったらしくw
実は僕は社員とカラオケに行った折に「(上の三択のどれかの間違った発音で)Suchmosっていいよね」と知ったかぶりしたところ、「(若者には当然らしい正解の発音で)Suchmosですよ!」とたしなめられたのです苦笑。
だってしょうがないじゃないですか、僕らあんまりテレビ見ないし、Apple MusicとかSpotifyで音楽聴いてても(それが最新のヒットチャートだとしても)誰が歌っているか気にしない。情報は基本的にモバイルで文字情報として読んでいるから、発音まではわからないって。
その昔、ジャニーズの人気グループKAT-TUNを正確に読めるかどうかでオジサンかどうかの境界線を引いたものですが、情報を目でも耳でも同時に得られるメディアって、基本テレビしかないわけで、新聞や雑誌、ネットメディアで得た情報は原則文字だから正確な発音はなかなか知り得ないってことです。この傾向、KAT-TUNの頃よりもっともっと顕著になってますよね、実際。
加齢によって聞こえなくなるモスキート音の存在を否定するな
「モスキート音」という言葉をご存じですか。モスキート音とは17,000ヘルツ前後の高周波ですが、耳元の蚊のような不快な音なのでその名がつけられました。このモスキート音、20代半ばを過ぎる年齢から徐々に聞こえなくなるということで有名になりました。
つまり、聞こえないのは耳の老化ってことです。モスキート音が聞こえるか聞こえないか、それが若いか若くないか、というひとつの境界線になっているんですね。
僕が言いたいことは、Suchmosをちゃんと(少なくとも本人たちが望む)正確なアクセントで読めないということは、一種の老化だってことです。環境老化、とでも呼ぶべきかな。
知らなくなって読めなくたって聞こえなくたって特に問題はない? はい、そのとおりです。
しかし、若者向けの商品のマーケティングをするとしたら、彼らの文化やカルチャー、特定の世代に通じる独特の何かについても知っておく必要があるのではないでしょうか。そう思いませんか??
例えば、ソーシャルメディアマーケティングを考えるとしましょう。大人にとってはSNSは、イコールFacebookであり、Twitterでしょうが、10代や20代前半の若年層にとってのSNSはInstagram(インスタ、と略して呼びましょう)であり、Snapchat(スナチャ、と略して呼びましょう)かもしれません。世代や性別に応じて、利用するSNSは明らかに異なり、分別されるのが現在の環境です。ティーンエイジャーをターゲットにした商品のマーケティングをするのに、Facebookを中心に考えてはいけないですよね。正しいマーケティングを行うなら、正しいマーケティングテクノロジーを使わなければならないし、それらに習熟している必要があることは言うまでもありません。
Facebook以前は、まずIT業界に働く僕たち”大人”がその存在に気づき、使い始め、そして正式に輸入されて普及していきました。つまり、知識ある大人のフィルターを経てから普及したわけですが、Facebook以降のSNS、InstagramやVine、Snapchatなどについては大人の利用者が増える前に、10代から20代前半の若年層に根を張ったのです。
イケてるロックバンドといえば?と質問したとして、40代以上の男性ならサザンオールスターズやミスチルと回答するかもしれませんが、20代ならそれこそSuchmosとかONE OK ROCK、RADWIMPSあるいはUVERworldあたりかもしれない。10代ならRIFとかポルカドットスティングレイ、UNISON SQUARE GARDENなんかが出てくるかもです(念のために言っておきますと、僕は全くわからないですw)
これらの知識というか情報が聞こえているかいないかは問題じゃないですが、いまとなっては聞こえていない”音”が存在していることを知っていて、その音を捉えるための努力をするということも必要だと僕は考えています。
数百年前の能楽の秘伝書「風姿花伝」は加齢による衰えの存在を厳しく指摘。
若者を重用したチームビルディングを目指せ。
能楽を芸術に押し上げた観阿弥・世阿弥親子が遺した数々の口伝を記した秘伝書「風姿花伝」。
室町時代に書かれたものですが、どんな能の達人でも中年になれば体もキレも悪くなるし容姿も衰えるから、派手できらびやかなシーンは若者に任せろ、というような指摘をしています。
「風姿花伝」は芸事の秘伝書ですが、生涯をかけて極めていくべき芸ではありながら、むしろ観客の存在を重要視していて、観客にウケるかウケないか、観客を感動させられるかどうか、が芸の良し悪しであると喝破しているのです。つまり舞台を成功させることを最優先するための、ショービジネスとその中のスタープレイヤーの心得書のようになっています。
観客を感動させる切り札となる”なにか”を「風姿花伝」の著者である世阿弥は’’花”と呼んでいます。若さゆえの”花”が時分の花であり、いつかは消え去る(老化の前に敗れる)ものですが、逆にいえばどんな達人でも中年から老年に入ればその花は手に入らない。
その意味で、例えば経営者なら会社の利益(ひいては株主への利益還元と言ってもいいかもしれません)を最優先すべきだし、マーケターなら対象の商品のブランド価値向上を最優先すべきで、自分に足りない能力やスキルがあるならば、それを補填することを考えるべきということが言えるでしょう。
つまり、さまざまな観点から多様性のあるチームビルディングが大事ということです。
市場からはさまざまな”モスキート音”が発せられているのですが、あいにく肉体的にも環境的にも我々は老化を止めることができず、どんどんそのか細い音を聞き分けることができなくなります。
ではどうしたらいい??どうしたら花を手に入れられるのでしょう。
簡単です。若者を側におけばいいのです。優秀な若者たちを集め多様性のあるチームビルディングをするのです。(男女の違いも市場の違いにつながるので、男性だけでなく女性も必要だし、海外市場を攻めるなら多国籍軍にしたいところです)
彼らには聞こえる音があり、僕たちには聞こえない。ならば彼らに、どんな音が聞こえているのか教えてもらいましょう。
若者と仲良くしましょう。彼らの耳を頼り、自らの熟練の手腕を授ける意思を持つことが、今後の経営者やマーケターの、プロデューサーとしての資質となる、僕はそう考えています。