iPhone(またはスマホ)で映画を撮影できる時代、いよいよ到来ですね。
正月に帰省した若い息子と、老いた母親のさりげない心の交流を描いた感動作
撮影したのは中国の賈 樟柯(ジャ・ジャンクー、1970年5月24日 - )監督。脚本家としても監督としても世界的に高い評価を受けている才人です。
作品のタイトルは「The Bucket(バケツ)」。旧正月に帰省した息子が都会に帰る際に、彼の母親が土産にと大きなバケツを渡します。もちろん有り難く受け取って息子は故郷を後にするのですが、あまりに重いわ嵩張るわで、正直持て余します。心の中ではそんな邪魔なモノを持たせた母親に対する文句をつぶやいていたかもしれませんが、とにもかくにも自宅に戻ります。
しばらくはそのバケツに触ることも嫌なくらい、ムッとしていた彼ですが、やがて中身を確認するにあたり、老いた母親が自分に寄せてくれている深い愛情を思い知るのです。
多少長め(3-10分??)のショートムービーや、有音動画CMのニーズも生まれてきてきた2018-2019年
通常のネット広告で動画を考える場合、掲載するのはモバイル向けになるし、そうなると基本的には短尺で無音が中心になります。
しかし、モバイルがいわゆるファーストスクリーン(TVではなく、モバイルの画面が主要であるという意味)になった現代では、広告動画だけでなく、それこそドラマや映画などの比較的長尺で音声・効果音があることを前提とした動画の消費もまた、モバイルで為されるようになってきています。
その意味では、テキストや画像を中心としたWebコンテンツの合間に置かれる動画広告は、原則短尺・無音になりますが、音声があるパターンの動画コンテンツ(具体的に言えばミュージックビデオや、ドラマ、映画などのコンテンツ)を観ている消費者に向けてならば、音声がある動画広告を配信するほうが理にかなっています。
というわけで、主流はやはり短尺・無音でしょうが、中長尺・有音の動画広告のニーズも生まれてきている。もしくは広告ではない、短めのモバイル用動画コンテンツ(上述したような音楽ビデオだったりミニドラマ)をプロモーション目的で制作することも有り得てくるわけです。
前項の「The Bucket」は、その流れで生まれてきた実験的な作品であるとも言えるでしょう。
とはいえ、シネコン・映画館であるとか、テレビネットワークに配信するのとは訳が違って、そうしたショートムービーを数百万人とか数千万人に視聴させるのは至難の技。となると、一本あたりの制作にあまり多くの予算は避けません。
そこで出てくるのが、手早く低コストでたくさん制作する必要性です。
このあたりの感覚から、iPhoneで映画を撮影してみたなどという試みが生まれているのでしょう。
逆に言うと、商業的映画作品をモバイルだけで撮影するといったことが、テクノロジー面での”挑戦的創造”から、実践的な商業的ニーズに変わるのも時間の問題かもしれません。実際のところ、ある程度の距離で条件さえ揃えてありさえすれば、iPhoneのカメラは高性能の専門撮影機器と遜色ないレベルまできています。
当社では、早くからモバイルで撮影してモバイルで編集する短尺動画の制作にチャレンジし始めていますが、クライアント(広告主)やモデルさんからすると、iPhoneだけで撮影するというと、なんだかバカにされてるような(手を抜かれているような)気がするかもしれない、そんな危惧が制作側である我々の方にもまだあります。
しかし、賈樟柯監督の「The Bucket」や、スティーブン・ソダーバーグ監督によるiPhone映画「Unsane」などの実例が出てくると、案外早いうちに、むしろ全部モバイルでやり遂げることがクール、と言われるようになるかもしれません。
その時に備えて、我々としては声を大にして言っておく必要があるかもですね。
リボルバーではモバイルの、モバイルのための、モバイルによるショートムービーも作れますよ、と。