あの試合になぜか人生を見たような気になっている小川です。
人生は12ラウンド。延長戦は無い
僕は当社運営のメディア dino.networkにこの試合のことについて、以下のように書いています。
(ワイルダーは)相手によって戦略をこまめに変えたりせず、とにかく12ラウンド・36分間 拳をハードヒットさせることしか考えないのだ。強打を当てること≒常にKOを狙うことなのだが、これに彼ほど集中できているボクサーはなかなかいない。
もちろん、敵ボクサーのタイプによって戦術を変えたり、試合中でも軌道修正できるクレバーなボクサーもいるし、それはそれで素晴らしいのですが(ベンチャーでいえば、臨機応変にピボットできるのは、しなやかさの証明だったりもするかもしれません)、ワイルダーは自分の強打に絶大の自信を持っているので、絶対にやり方を変えたりしないのです(グリッド的発想でしょうか)。
世界的なスポーツとなった英国発競技は多いですが(最近W杯で沸いたラグビーもそうだしテニスもそう)、ボクシングには延長戦という概念がない。12ラウンド戦った結果、それだけしかみない潔さがあります。それは人生に延長戦がないのと同じです。
だから12ラウンド(かつては15ラウンドだったし、混在する時代もありましたが、今では世界的に12ラウンドに統一されました)、3分毎に1分休んでまた戦う、トータル36分(+11分の休憩でも47分間)、そこで自分の全てを出し尽くさなければならないし、出し惜しみしたりセーブしても意味がない。かっきり出し尽くしてやり尽くさなければならないわけです。
だから、勝利を得るという目的のために本来の自分のスタイルを変えて、状況に合わせるのもよし、頑なに自分を曲げずに最後までチャンスを伺うのもよし。余力を残さず全力で戦えばいいのです。
先のワイルダーvsオルティスのタイトルマッチでいえば、勝負が決した7Rまでは明らかにオルティスが押してました。ワイルダー自慢の右はなかなかヒットせず、彼も相当にイライラしていたはずだし、セコンドのチームスタッフもやきもきしたでしょう。しかし、前述したようにワイルダーは自分の強打を徹頭徹尾信じていた。いつかは当たる、当たれば勝つ。最終ラウンドまでに必ずそのときは来る、と信じて疑わず、戦い方を変えたりしなかった。
要は信念の問題ですよ。
負けたらいくつものスーパーファイトのチャンス=大金稼ぐチャンスがふっ飛ぶわけですからね!普通の人は愚直でなんていられない、いろいろちょこまか考えちゃうことでしょう。
その結果最後まで強打が当たらなかったら、それはもうしょうがない。それが自分のボクシングなのだから。12ラウンドの間にその時が来なければ、それはもうそういう運命なのだ、という傾奇者のような人生観を僕は感じたのです。
傾奇者ワイルダーの美学に学ぶ
ワイルダーは入場の際に、ダースベイダーなどのヴィランを彷彿させるような仮装をして登場することで知られています。この日も会場をざわめかせる魔道士のような仮面を被り、悪役(ヒール)としても立ち位置を明確にするような出立でした。かと言って、キングコングのニックネームを持つ怪異な容貌のオルティスはとても善玉(ベビーフェイス)とも見えないですが笑。
その昔日本の戦国時代に生まれたとされる傾奇者の文化(婆娑羅とも言いますね)は、僕の印象ではパンクに近いし、メメント・モリの死生観にも近い、世界的なムーブメントだと思うんです。
彼らもまた世間的に奇異に見られる独特のファッションを生み、周囲から眉をひそめられるような奇行に走る者も多かったのですが、ワイルダーの仮装もこれに近い心境なのだと僕は感じます。
来世なんて知るか。
人生は一度きり、思い切り生きなくてどうするよ!というカラッと乾いた砂漠のような湿り気のない陽気さは、死んだらそれっきり、という良い意味での諦念があります。
死んだらしょうがない、負けたらしょうがない。延長戦なんてないし再試合もない、だからやるだけやるさ、やるだけやってダメなら、それはもうしょうがない、という能動的な諦めに支えられた、猛烈なやる気です。
来世なんてない、延長戦なんてないし再試合もない。人生の勝負はいっかいこっきり。ならば見事にたちふるまってみようじゃありませんか、これがベンチャーの心意気なんです。
そんな気高い心意気を感じて頭を丸めてみました(嘘)、今までデジタルタトゥーになるのを恐れて隠してましたが、トップ画に晒しておきますw
小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。