ミヒャエル・エンデの名作「モモ」の中に登場する時間泥棒をご存じですか?人々の大切な時間を奪い、生活のゆとりをなくさせていく恐ろしい敵です。しかし、考えてみると、お客様や取引先の時間を奪っておきながら、なんとも思っていない無自覚の時間泥棒は案外身の回りにたくさんいるようです。そう、あなた自身のことかもしれませんよ。

テクノロジーの進化が業務スタイルを変えてきた・・けれど

我々の業務スタイルは日々進化しています。一昔前ならオフィスの固定電話とファックス、紙とペンの作業を強いられていたオフィスワーカーは、ノートパソコンやタブレット、そしてもちろんスマートフォンなどのモバイル機器をあてがわれて、デジタルな業務へのシフトを要望されていますね。
また、狭い車内に詰め込まれて職場まで運ばれる通勤地獄は、幸か不幸かコロナ禍の影響で軽減されつつあります。代わりに台頭してきたのが自宅勤務を実現するテレワーク。
zoomに代表される、専用ツールの普及もあって、通勤から解放されて、業務前の移動時間の無駄は、どうにか解消されていく方向にあります。

テレワークの主体となる作業ツールは、電話やファックス、対面会議から完全に脱却して、メールやメッセンジャーツール、Zoom、やGoogle Meet などのオンラインミーティングツールになっています。どれも、原則として場所に縛られない、物理的にはどこにいようが全く支障なく仕事ができるものばかりです。(オンラインミーティングは背景が見えることで、いまどこにいるのか相手に知らしめてしまう恐れがありましたが、今では背景をデフォルトの壁紙など自分の好きな画像に変えることができるようになって、完全に固定された場所にいなければならないという理屈はなくなりました。例えば当社=リボルバーでは、テレワークとはイコール在宅勤務ではなく、オフィス含めてどこで作業しても良い→フルーツサンド屋に並んでいてもいい、という意味です。)

こういう時、スマホの普及のおかげでどこにいてもなにをしていても仕事が追いかけてきて心が休まらない、という馬鹿なことを言う人がいますが、コレは全く逆です。

僕は仕事人としての人生は、オンとオフが入りまじいるという意味で、霜降り肉のようなものだと思っています。脂身(オフ)と赤身(肉)を簡単に切り分けることができず、入り混じっているようなものであるということです。
そうであれば、オンとオフの切り替えは本当に柔軟でなければならず、ここから数時間もしくは数日間は完全にオフ!というように単純に切り分けられない世界に僕はいる、必要に迫られればオフからオンにコンマ数秒でスイッチングできる、そしてオンに真摯に対応して完了したら、また即座にオフに戻れば良いのです。それが慌ただしい、ゆっくり休めないというなら、仕方ありませんが、少なくとも起業家人生はそういうものだと思っています。

どこにいても何をしていても、スマホがあるおかげで、万一何か対応しなければならないような事態が発生してもすぐに知ることができるし、対応することができる安心感を僕らは持てるのです。

何か起きたら、即刻知ることができるからこそ、僕たちは安心して余暇を楽しめるし、リラックスできるのです。何か起きていてもその事態から隔絶された場所にいたい、知らされずにいて余暇を最後まで楽しみたい、という人は、そもそもスタートアップには向かないし、超安定した環境で、安心していつでも誰とでも交換できる“歯車”として生きていきたい人であると僕は思うので、別に責めはしません。ただ、当社には必要ない人です。

絶対に交換不可能な歯車というものは存在しないし、あってはならないのですが、簡単には交換されないぞ、と主張しない限りはAI時代に生き抜けないと思うし、存在価値がないように感じます。休むよ、休憩を取るし睡眠も摂るよ、だけど必要とあれば即オンモードに戻って一働きするよ、という戦士とか兵士のような気構えの人は今後も価値ある人だと思うし(休まないよ、寝ないよ、という社畜的な人がいいと言ってるわけじゃないことは分かってください)、そういう人たちにとって、休憩中のリラックスモードの時にアラートを飛ばしてくれるツールを携帯できることは、ほんとに心休まることだと思うのです。

コレスポンデンスの基本が身についていない?

ところで、デジタルコレスポンデンスが当たり前になった現代において、コミュニケーションというか、情報の送受信・解析の中心はアナログ的なテキストです。

このテキスト自体は、手紙やテレックス、FAXなどの時代から変わらず、送り手と受け手がそれなりに訓練されていないと 情報伝達がスムースにいきません。
今回の投稿の主題はここにあります。
相手の時間を奪うような書き方をしてはならない、それは時間泥棒ですよ、ということを言いたいのです。

まず第一に、今のコレスポンデンスのメインとなるツールはメールです。メールというものはフォーマットが決まっていて、タイトルがあって、本文があります。
最近はこのタイトルを無視して本文を書く(同じスレッドでのやりとりが続いて、タイトルと関係ない内容に本文が変わっていく、ということも含みます)風潮がよく見受けられますが、本来はタイトルは本文の内容を端的に示すべきです。本文とタイトルの意味が食い違うことは、情報伝達のミスリードにつながるリスクを生むからです。

少し前なら、メールのタイトルは、そのメールを読むかどうか、読むにしても高いアテンションを与えるかどうかなどの、優先順位づけに関わるものだったわけですが、今ではその役割が低下し(それは“タイトル”を持たないLINEなどのメッセンジャーツールの普及の弊害ともいえます)、読む読まないなどのプライオリティは、送り手(メールの発信者)が誰か?とか、その瞬間にホットなやりとりが続いているトピックかどうかなどによって決められるようになってきているようです。

しかし、流行がどうであれ、基本として考慮すべきポイントはそう簡単に変わるものではありません。

タイトルから本文の内容を類推できるようにすることは、やはり非常に大事です。例えば僕は、経営者として1日200-400のメールを処理します。

1日は24時間、睡眠時間や食事の時間などを除くとざっくり1日は16時間しかありません。仮に200通のメールとして、読んで 内容を鑑み返信や指示内容などを考えたりするには、個々のメールの重要度や緊急度に応じて、対応のプライオリティを決めねばなりません。

このプライオリティ決定スキームを効率よく行うために、一つ一つのメール(≒コレスポンデンス)の可読性とかその意図するところ、伝えたい内容の伝達力などをできるだけたかめてもらいたいと強く感じるのです。

タイトルと本文の意図を合わせる(タイトルは本文の究極のサマリーであるべき!)、そのために一つのやりとりで伝えるべき内容は一つに絞る、相手がYES NOで回答できるようにシンプルな内容にこだわる、長文を避けできるだけコンパクトにする(モバイルで80%以上のメールのやりとりをこなす僕にとって、詳しくは添付で みたいなことを書かれるのは拷問です。できるだけメールに平文で書いて欲しいです)など、相手に誤解させたり、見間違いさせたりしないようにすることは大事だし、読み手に余計な時間を使わせないようにすることが大事です。

時間泥棒にならないために

全ての業務は数学的に考えるべきです。
例えば、メール(文章)を書くことが面倒くさいという理由ですぐ電話かける人がいますが、あれはまさしく時間泥棒です。自分の時間は節約できているかもしれないが、電話を受ける方は高度にスケジューリングした業務中に突然割り込まれて、予期せぬ時間を奪われることになります。まして、どんなトピックかもわからないわけですから、事前準備もできないうちに、掛け手の都合に合わせて受け答えしないとならなくなります。

(僕はこれらの理由もあって電話は嫌いです。予定された電話会議以外は原則出ません)

つまり、自分の都合のみ考えて動けば、相手の時間を奪うということであり、ビジネスは常に相手があることを考えれば、相手を効率的に動かすために常に自分と相手(関係者)すべての総和としての消費時間を短縮し、効率化しなければならないということです。

まず要件あるいは結論を伝えること。説明は後にすべきです。

添付を見てください、とか、前のメールを見てください、とかいう書き方をする人がいますが、それは嫌がらせと同じです。どうせメールを書いたのなら、そこに必要事項を書けや!と怒鳴りたくなります。

箇条書きなどを使って、ビジュアル的にもわかりやすく区別つけやすい表現を心がけること。
シンプルイズベスト。見やすくわかりやすく、見間違いや勘違いを防ぐ書き方にする。できるだけ短く簡潔にする。

(スマホでいえば、スクロール一回で全文読めないとイライラします)

とにかく、読み手の時間を奪わない、メッセージを読む時間もそうですが、そのあと そのメールを起点としてなんらかの行為を行う必要が生まれるとしたら、その行動をスムースかつ間違いなく行えるように配慮することが大事です。

そういう配慮は、100%完璧であることはなかなかできません。できませんが、ある程度そういうことを気にかけて働くこと、自分の周囲(関係部署、上司、お客様などなど)の貴重な時間を安易に盗まず、できるだけ迅速かつ簡単に行動してもらえるよう配慮すること。そういう配慮を全くしないとすれば、それはあなたがピュアな時間泥棒である、という証拠になります。それだけは、絶対に避けましょう。ほんとうに、よろしくお願いします。

画像: 時間泥棒にならないために

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。dino.network発行人。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。
ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

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