ゲストは株式会社日立製作所システム&サービスビジネス統括本部コーポレートコミュニケーション本部 広報部 担当部長の佐藤 篤 氏。
dinoを用いて構築・運営されている 日立製作所の”経営者向けWebマガジン「Executive Foresight Online(略称 EFO)」”の編集・発行責任者として活動する佐藤さんに、なぜEFOを運営するのか、そしてEFOを通じて様々なコンテンツを配信し続ける目的とその試みについて語っていただきました。
「Executive Foresight Online(EFO)」とは?
AI、IoT、1兆ドル企業、仮想通貨、ブロックチェーン、自動運転…私たちは、間違いなくデジタル変革の真っただ中にいます。同時に、人口減少、超高齢化、低成長経済、深刻化する格差など、経験したことのない課題を抱え込んだ時代を生きています。
競争は激しく、変化のスピードはあまりに速い。しかし、経営者は、このお手本のない荒天の海で舵を取り続けなければなりません。
そんなデジタル社会の激流の中、自分たちの価値を磨くことで、持続可能な事業づくりに取り組む経営者がいます。人間の本質を見極めようとフィールドを駆け回る研究者がいます。社会課題の解決に没頭する起業家がいます。実務家の意思決定を支援するために、アカデミズムの殻を打ち破ろうとする学者がいます。
EFOは、そんな課題解決に向けてリアルに取り組む人の声を、言葉を、戦略を共有するためのメディアです。
日立製作所のオウンドメディア「Executive Foresight Online(通称EFO)」開設の狙い
「入社以来宣伝畑を歩んできましたが、現在は情報系ビジネス、いわゆるICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)ビジネスの宣伝活動を担当しています」と佐藤さんは口を切りました。
佐藤さんによれば、ICTビジネスの本質がモノからサービスへと大きく変化してきている、そしてそのことによってICTビジネスの目的、商材、顧客に以下の表のような変化が起きているといいます。
従来 | 現在 | |
---|---|---|
目的 | ICTの活用による省力化、コスト削減 | ICTによる経営課題の解決、経営意思決定のサポート、 ICTを成長のエンジンへ |
商材 | ハードウェア、ソフトウェア、システム開発(モノのビジネス) | ソリューション、サービスビジネスへ(経営課題解決) |
顧客 | 情報システム部門 | 経営幹部、経営企画部門など |
具体的な課題と、課題解決に向けた目的と手段「顧客のICT購買プロセスに関与する顔ぶれがこの10年で大きく変わりました。これまで全般に情報システム部門中心だったものが、ICT導入への目的の変化とともに経営層、経営企画部門の関与の重要度が増してきました。情シスだけという部門単位ではなく、より上流、幹部レイヤーへのタッチが必要となりますが、人的リソースに頼るだけではなく、オウンドメディアを介して新たなターゲットとのコミュニケーションを実現することが必要だと感じています」
「さらにICTビジネスにおける顧客の購買プロセスをブレイクダウンしてみると、システム計画の段階でシステム選定の候補に入ってないとRFP(Request For Proposal。つまり”提案依頼書”のことで、「システム選定」を行ううえでベンダーに提示される書類)をいただくことができません。お客様からすれば、もともと発注経験のあるベンダーや、ICT専業のベンダーにRFPを渡すのは自然なことです」
そして、このRFPを渡していただける候補(企業)はおおむね3社であると佐藤さんは指摘します。
「競合するシステムソリューションベンダー、システムサービスベンダーは数多く、そのために経営層や経営企画部門との新たなタッチポイントを創出し、コミュニケーションの頻度を高め、日立のICTビジネスの認知を向上させ、更にエンゲージメントを強化すること。そしてRFPを渡していただける候補3社に常に入ること。」
それがEFOを運営する目的です、と佐藤さんは話しました。
では次にその手段についてですが、と佐藤さんは続けます。
「過去の典型的な広告コミュニケーションでは、時間とお金をかけて開発した広告クリエイティブ(TVCMや新聞・雑誌広告)を高額な掲載料を払ってテレビや新聞、雑誌に掲載するというスタイルが主流でした。でも、その効果は一時的なものであり、持続させるためには期間に応じて更に莫大な費用が必要となります。
その結果、殆どの広告キャンペーンは、認知と忘却の繰り返しで、商材が変われば、また初めからやり直し。中長期的なコミュニケーション活動としてはあまりにも効率が悪いというほかありません。
そこで我々は手段の見直しに取り組むことにしました。そうしてたどり着いたのが、現在のEFOのスタイル、ビジネス情報を提供するWebマガジンの形です。想定読者から支持されるWebサイトを自社で企画運営することで得られる中長期的なストック効果に期待することにしたわけです」
もちろんビジネス情報を配信している大手Webメディアと真っ向から戦うつもりは全くありません、と佐藤さんは話します。「戦うつもりはありませんが、少なくとも想定する読者から”経営に関する新しくて有益な情報を入手できるWebサイト”と認識され、”あのサイトも定期的に覗いておかなければ”と思ってもらえる存在をめざしています。」