これからの“日本の”メディアビジネスはどこへ向かうのか
時代の流れに添い、さまざまなムーブメントを起こしてきたJag 山本さん。これからの日本のメディアビジネスはどこへ向かっていくのか、ご自身が掲げる方向性を交えながら見解をお話していただきました。
まず、メディアをテキストメディアと動画メディアの2つに分け、それぞれの特徴について着目していきます。
テキストメディアは、ニュース・レポート・コラム・小説、コミックなどが中心。動画メディアは、ドラマ、音楽、バラエティなどが挙げられ、テレビと動画配信サービス(Netflix、YouTube、Amazon Prime Videoなど)に分けられます。現在は、動画配信サービスの人気に伴い、テキストより動画の方が人気が高い傾向。
ビジネスモデルを分けてみると、YouTubeやSmartNewsをはじめとしたサービスは広告収入が多く、一方でNetflixやAmazon Prime Videoなどを筆頭とした動画配信サービスはユーザー課金型のサブスクリプションにて収益を得ていることが多く見受けられます。
また、Jag 山本さんは、ご自身が講師を勤めている武蔵野美術大学院の学生12名(中国出身:5名/日本出身:7名)を対象にアンケートを実施。「母国語以外でニュースを見る割合は?」という問いに対し、以下のような結果が判明しました。
中国出身:5名
日本語と中国語の両方…3名
日本語のみ…1名
中国語のみ…1名
→4/5が母国語以外のニュースも見ている
日本出身:7名
日本語のみ…7名
→全員が日本語のニュースしか見ていない
有料のニュースを見ている…0名
→全員が無料のニュースしか見ていない
インターネットが普及し、世界中の情報が手に入りやすい世の中になった現在でも、日本人は母国語のみでニュースを読んでいるという実態。Jag 山本さんはこの結果に「Cookieやリタゲ広告などを通じ、ユーザーは日々同じような情報を受け取っているため、刺激や新しい発見を見出せていない。メディアに追従されるばかりにフォールスコンセンサス効果※が生じ、世界観が狭くなってきている。」と主張します。※自分の考えが周囲の人間と同じ意見であると思い込む認識の偏りのこと
また、洗濯洗剤のプロモーションを例に日本とアメリカの違いについてご紹介していただきました。
Jag 山本さんは、日本の某大手メーカーの洗濯洗剤の存在を知っているか、周囲の男性約15名にアンケートを実施しました。その商品は頻繁にテレビにてCMを行っており、消費者の目に触れる機会は比較的多かったにも関わらず、商品の存在を認知していたのはわずか3名。日本人なら誰もが知っているはずの大手メーカーのマス商品が、消費者に届きにくくなっているという実態が伺えます。
一方、洗濯洗剤をサブスクリプションにて販売しているとあるアメリカの企業では、大手メーカーと比較して認知度は低いものの、マーケットの確保に成功しています。
当企業では、テレビCMなど起用したマス向けの告知は行わず、リタゲなどWeb広告を活用し、本当に訴求したい小さな市場に向けてプロモーションを実施しています。大手メーカーが対象とするマーケットと比較し、市場規模は小さいですが、売り上げに直結しやすい・本当に訴求したい相手にPRをすることで、着実に売り上げに貢献。商品の生産量は少なくても、プロモーションの効率をあげることで無駄のない収益を実現していると言えるでしょう。今後、日本でも同様なプロモーションやビジネスの展開が予想される、とJag 山本さんは述べます。
近い将来、消費者は日本のメディアに飽き、受け身がちだった情報収集から次第に刺激を求めるようになり、国内だけではなく海外の情報に目を向けるようになる、と考えられます。その結果、「今まで知り得なかった情報や本当の情報に触れることによって、大きなパラダイムシフトが起こる。飽和状態となりつつあるニュースメディアと、プロモーションの市場の変化が同時期の波で来るだろう。」と、Jag 山本さんは予想します。
では、今後Webメディアはどのように変化していくのでしょうか。
オウンドメディアから“スポンサーメディア”へ
昭和や平成などのテレビ番組は特に、企業やスポンサーが冠を掲げていながらも、番組で配信するコンテンツ自体は商品に直結するものが少なかったように見受けられます。しかし、現在のオウンドメディアは自社商品やブランドのPRがかなり強くなっており、その様子をJag 山本さんは「オウンドメディア から、“スポンサーメディア”へと変化している」と提言しています。
スキーやスノーボード、エアレースなどを配信しているRed Bull TVを例に解説していただきました。
Red Bull TVで放送されている大会の映像では、会場にあるフラッグはもちろん、選手たちがレッドブルを飲む姿などが自然と映し出されています。『スポーツをする場には必ずレッドブルがある』『日常よりエナジードリンクを愛飲する』『エナジードリンクを飲むことのカッコよさ』など、自社製品であるエナジードリンクを介し、共感してくれるユーザーの場や世界観を作るというパブリック・リレーションを起こしている、ということが分かります。
Red Bullは、Red Bull TVというメディアにて自分たちのファンを創造することに成功し、メディアとしての存在意義を全面に発揮できていると考えられます。コンテンツとスポンサーをマッチアップさせ、マス商品を消費者に届けていると言えるでしょう。
そもそもオウンドメディア とは?
本来、オウンドメディア(無料メディア)とは、ユーザーが課金しても見たいものが無料で見れることに意義があることを再認識して欲しい、とJag 山本さんは述べます。現在のオウンドメディアは、ユーザーが課金してでも見たいものではなく、「Googleに評価されるために」と、SEOばかり意識している傾向があります。それに伴い、YouTubeの方がコンテンツ力が高く、Twitterの方が得たい情報が探しやすいという実態が起こっているのも事実です。
20世紀は大企業の専売特許が多い傾向でしたが、これからは、企業の大小に関わらず「この世界観だから見たくなる」「応援したくなる」といったユーザー心理のパラダイムシフトを起こしやすくなる、とJag 山本さんは述べます。
Youtubeはコンテンツであふれている、TVはつまらない、今のニュースに対価価値を感じないからニュースにお金を払わない。飽和状態になりつつあるWebメディアに、ユーザーが課金してまでも見たいニュースやコンテンツは存在するのでしょうか?
その成功例として挙げられるのが、NetflixやAmazon Prime Videoなどで放送されている“オリジナルドキュメンタリー”です。オリジナル番組や作品を観るためにサービスに加入するユーザーも多く、その傾向からApple TV +やHBOなども追随しています。
ニュース記事にはお金は払わないけど、動画配信サービスのオリジナルドキュメンタリーは、お金を払ってまでも観たい。この傾向より、世の中にありふれたニュースではなく、より深掘りをしたジャーナリズムのあるコンテンツがユーザーから求められる、という傾向が分かります。このジャーナリズムは、今後の日本のWebメディアを生き抜く重要な鍵となり、中でも、比較・検証などを主軸にコンテンツを展開しているYouTuberは、ジャーナリスト予備軍として期待できる、とJag 山本さん述べます。
Jag 山本さんは、「広告でユーザーを追いかけるだけではなく、メディアがジャーナリズムを追求した価値あるコンテンツを世に配信する必要がある。自分たちの世界観に共感してもらえるような良質なファンを育てることで、メディアとユーザーの関係性が変わる時代が、もうすぐそこまで来ている。」ジャーナリズムとパブリック・リレーションが日本のメディアを切り開く重要な鍵であると結びました。
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Jag 山本さんのお話から、これからの時代SEOを意識したコンテンツだけではなく、ジャーナリズムを意識し、メディアが主体となって、ファンを育成していくことが重要である、ということが理解できました。
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