しかし、語源を考えれば、サイトもしくはメディア自体を構築する為に使うというよりは、そこにアップロードし、蓄積していくコンテンツそのものの作成や配信の管理を行うべきツールであるはずです。しかし、大抵のCMS開発会社や提供業者はそのことを忘れているか、あえて無視しているような気がします。
コンテンツ管理システム(英: content management system, CMS)は、ウェブコンテンツを構成するテキストや画像などのデジタルコンテンツを統合・体系的に管理し、配信など必要な処理を行うシステムの総称。2005年頃より一般的に普及したといわれる。コンテンツマネージメントシステムとも呼ばれる。
CMSの誕生と、ブログとの関係
CMSはコンテンツ(の制作と配信の)管理を司るソフトウェアですが、なぜか「ホームページを構築して運用管理できる便利なソフトウェア」というような解説をされることが多いですね。
確かにWebサイトを立ち上げるところからCMSの役割は始まりますが、本来の役目はコンテンツ(記事)を簡単に作成して、正しいやり方で配信するところにあるはずなんですが。
インターネット黎明期、Webを活用し、情報をネットを介して世界に公開するためにはサーバー設置やネットワーク管理などの知識が不可欠でしたし、Webサイトを作るためのHTML(やCSS)などの特殊な言語の習得が必須でした。
Webサイトを使ってインターネットビジネスに参入しようと考えた大企業は、サイト構築や情報配信のスキルやテクニックを習得しなくても扱える手段として、CMSというアイデアに至ります。1990年代後半から2000年代前半に生まれた初期のCMSたちは、非常に高価で、それは重厚長大なものでした。
その後、ブログ(注1) という、簡易的なWebサイト(定義すると、時系列順に更新された情報を掲示するタイムラインを備え、一つのコンテンツあたり一つのリンク=パーマリンクを持ち、コメント機能やトラックバック、RSS配信などを標準で備える)を立ち上げ、HTMLなどの知識なくともコンテンツを配信することができる仕組みが生まれ、Webサイトを個人が簡単に持てる時代になりました。
(注1)当初はWebにLogを残すことからWeblogと呼ばれ、それが徐々に短縮化されてblogと呼ばれるようになりました。2001年頃、ブログサービスの祖と言える米国シックスアパートの日本法人を率いていた当時の社長 関信浩さんと「Weblogよりブログのほうが短くて呼びやすい。短い呼び方が定着するとき、ブログは普及した、と言えるのだろうな」と話していたことを昨日のことのように思い出します。
ブログは「簡易的なWebサイトとしてのブログ」+「そのブログを作り出すためのCMS」の両側面を持っています。ブログそのものはパーマリンクやタイムライン、RSS、トラックバックなど、別のシステムで作られたとしても関係なく同じ標準仕様で定義されるべきWebサービスの塊です。Googleなどの検索エンジンに対する正しいSEO的仕様を備えたWebサイトであり、近代的なWebサイトの基本構造を簡単な操作で作り上げるためのノウハウを詰めた、簡易的なCMSの誕生とも言えます。
個人ツールとして始まったブログですが、上述のように当時の検索エンジンのアルゴリズムに最適化された(つまりSEO対策を最初から施された)仕様を持つブログは、労せずして検索結果上位を占めるようになります。投稿されたコンテンツが全てパーマリンクを持ち、さらにそれまで投稿されたコンテンツと自動的に相互リンク状態になるうえ、トラックバックによって他のブログとも相互リンクを貼ることが自在にできたので、いわゆるページランク(注2) 対策はバッチリだったのです。さらに言うと、簡単に投稿できることから、ブログサイトは非常に更新性が高く、アクティブなサイトになったので、それもまたGoogleからするとクロール対象として非常に好ましい相手だったのです。
(注2)ページランク (PageRank) は、ウェブページの重要度を決定するためのアルゴリズムであり、検索エンジンのGoogleにおいて、検索語に対する適切な結果を得るために用いられている中心的な技術。Googleの創設者のうちラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンによって1998年に発明された。名称の由来は、ウェブページの"ページ"とラリー・ペイジの姓をかけたものである。
その後、個人ツールとして優秀であることから、企業の中においても目端の利く人たちが目をつけ、ビジネス用途としてブログが使われることになります。そしてブログを作るソフトウェア(当時最大シェアを持っていたのがMovableType、いわゆるMT)をCMSとして使って、企業サイトを作る、という試みも始まったのです。
その後SNS、特にTwitterの台頭によって、個人が自分のステイタス(状態)をリアルタイムにWeb常にアップする方法はどんどん洗練され、普及していくにつれ、起承転結を持ったきっちりとした記事を書くのに適してはいても、それなりに知的創造行為であるブログを書く人≒ブロガーと、Twitterで相当にパーソナルな独り言≒Tweetを書く人たちとに分別されていきます。
反対に、企業の”CMSとしてのブログ”を使う事例はどんどん増えていき、同時にブログを作るためのブログソフトウェアを作る企業達もまた、B2B、すなわち企業を対象とした比較的高度な機能を備えたCMSへと自社プロダクトを進化させる方向に舵を切ったのです。
この動きの陰で、ブログソフトウェアの主役もMTからWordPressに世代交代し、今に至っていると言えます。
ブログベースCMSの最大勢力WordPress
今ではWordPressがブログソフトウェアであるということを知らない人も多くなりましたね。いまではWordPressは世界のCMS市場のシェア60%を占めているそうです。この数字はすなわちインターネット上のWebサイトの30%近くがWordPressで作られている、ということになります。
つまり、いまや名実ともにWordPressがWebサイト構築におけるスタンダード。しかもWordPressはオープンソースであり、ソフトウェア自体は無料。Linuxとかと同じです。
無償で手に入るWordpressを使ってWebサイトを構築する作業自体は有料なわけで、WordPressを使ってWebサイトを構築しようとすれば、自社のエンジニアにWordPressに習熟してもらうか、外部のWeb制作会社に委託して作ってもらう、ということになるわけです。
WordPressの基本コードを管理し、開発しているのは米国のAutomatticという会社です。(実はリボルバーという社名は、このオートマチック社に対抗してつけたのですw)AutomatticはWordPressをクラウドベースでも(wordpress.com)提供しています。どちらかというと個人・中小企業向け、という感じですが。
B向けに事業モデルをシフトするに従って、彼らWordPressも、先述のシックスアパートのMTも、徐々に高機能化し、Webサイトの構築そのものに重点を起き、コンテンツを楽に作る、効率的に配信する、というポイントにはさほどイノベーションを感じさせないものになっていきます。
その後、WordPress.comに似た、クラウド型のCMSが次々と市場に登場してくるのですが(Wix、SquareSpace、Strikinglyなどがそれです)、彼らのサイトの謳い文句を読めばわかりますが、彼らの売りはほぼ”誰でもクールなサイトを作れます”ということ。訴求しているのは、ホームページを作るためのソフトですよ、ということです。WordPressへの対抗上ということなのでしょうか、コンテンツの制作と配信そのものへの配慮を強く打ち出すCMSはあまりないように思います。
もちろん本当はその面でも素晴らしい製品なのだろうとは思いますが、自分たちではそれほど主張していない、ということなのです。
個人の情報発信に再びフォーカスしたMedium
Twitterの共同創業者の一人、エヴァン・ウィリアムズをご存じでしょうか。
ブログサービスの先駆けであるBlogger.com(2003年、Googleによって買収)の共同創業者でもある彼は、テキストベースの情報発信ツールにこだわり続けているシリアル・アントレプレナーです。
Twitterを離れたあとは、「Web上でよい文章を書くための美しくて使いやすいプラットフォームの構築」を目指してMediumという企業を立ち上げ、同名のシンプルなブログサービスをスタートさせました。
このMediumは、サイトを作る、ではなく、コンテンツを作る(というより記事を書く)ことにフォーカスしたサービスで、非常にエレガントなUIを持つ情報発信ツールです。
ただ、事業としては(一時は企業向け=B2B市場でマネタイズを図ったようですが今はほぼ撤退状態)B2Cで、マネタイズをどうするのかやや不明のまま、一般消費者向けのサービスを続けているようです。(とはいえ、Mediumは、コンテンツを作れる人、記事を生み出せる人、文章を書ける人に対する重要な福音を産んだサービスであると僕は思っています。)
企業の情報発信にフォーカスするdino
Mediumからインスパイアされた我々は、個人ではなく、企業が情報発信を行ううえで、継続して使い続けていただけるようなエレガントなツールを提供することに、ビジネスチャンスを見出しました。
先述のように、Webサイト生成の最大シェアを持つWordPressも、後続したクラウド型の新興WebCMS企業たちも、みなサイトの構築のしやすさに重きを置くサービスでした。でも、考えてみてください。Webサイトを作るのは確かに大変ですが、作るのは原則一度であり、大切なのはそのあといかに潜在顧客に喜んでもらえるコンテンツを作り、配信し続けられるかなのです。
しかも、今の世の中は、スマートフォンがファーストスクリーンであり、縦型でそれほど大きくない画面で効率的に記事を読んでいただけるようなデザインを作ろうと思えば、それほど凝った作りはできません。また、分散型のコンテンツ消費時代であり、GunosyやSmartNewsといったニュースアグリゲーションアプリや、Facebook、LINEなどのソーシャルアプリ上で記事を読んでいる人が多く、彼らのデザインやUIに寄せた作りをしないとなりません。つまり、あまり特殊で突飛なデザインをすることができない、いえ、する必要がないのです。
そこで、リボルバーは、世の中でもっとも普及していて、標準的なデザイン、レイアウト、包括的に言えばUI/UXなどの仕様を簡単にまとめ、最初からそれをお客様に提示することで、余計な画面設計をお客様に強いる無駄を省くことにしました。そして肝心の記事、コンテンツ制作をなるべく簡単に迅速にできて、複数のライターたちがいても共同作業を円滑に行えるような仕組みを軸に、モバイルインターネット時代の、非常に更新性の高いWebサイト、いえ、Webメディアを運営しやすい画期的なCMS機能を開発したのです。
これが、企業が簡単に美しいコンテンツを制作し配信するためのCMSを中心として、HTMLやネットワークなどの詳細知識がなくてもメディア運営を可能にするパブリッシングプラットフォーム「dino」を開発した背景です。
CMSはいまではコンテンツマーケティングの中核テクノロジーになってきていると思います。
その意味で、真にコンテンツマーケティングに役立つマーテクとして、このdino を磨き続けていきたい、そう考えています。