即効性の高いマーケティング手法は存在しますが、真のブランディングを行う(消費者もしくはお客様の心の中に、自分たちのブランドメッセージを正確に届け、しかく記憶に留めていただき、共感いただく)ためには、ある程度時間がかかります。時間と手間をかけなければ、誠意は伝わりません。誠意が伝わらなければ、ブランディングは成立しないのです。
ところが、このことを理解してもなかなか実行に移せない(どうしても即効的な成果を求めてしまう)人は多く、正しい“方法”を伝授されても、実践に移せない人がとても多いのです。

トップ画は僕の愛車(カワサキ 750RS、通称ゼッツー)です。生産開始から40年以上経過しているモデルですが、いまだに人気絶版車の頂点にあるバイクです。広く長く愛されるブランドを作るための仕事をするうえで、またとない生きた証左の一つだと思います。

コストと時間かけても見合うだけの人脈の作り方

長らくお会いしていませんが、古い友人に『ほめ言葉ハンドブック』というベストセラーを上梓された祐川京子(ゆかわきょうこ)さんという方がいます。人脈作りにひとかたならぬ努力と情熱を傾けられる方なのですが、昔 この人に「有効な人脈作りのために、心掛けていることはありますか?」と質問したことがあります。

すると、少し考えたあとで、彼女はこう言いました。

「毎年年賀状を2000人に出しています」

どういうことかというと、まず自腹で、会社支給の年賀はがきではなく、自分でちゃんとデザインして、市販のものとは違うオリジナルな年賀はがきを用意する。(現在価値として、一枚の年賀状は63円ですから、印刷する費用抜きでまず126,000円かかりますね)
そして、手書きのメッセージも加えて、これをちゃんと元日に届くように出します。
元日に届かなかかったり、そもそも年賀状自体が来なかった人はリストから外し、新たに知り合った方を加えるなどの新陳代謝を行いながら、原則としてこの2000人をキープしていくのだそうです。

断っておきますが、この話は10年ほど前の話なので、祐川さんもいまでは紙の印刷物としての年賀状送付を行なっていないかもしれません。あくまで2000年代終わり頃の話です

この作業を、彼女は全部自分で手間と時間をかけて行なっている。僕以外にもこの話をしたことはあるそうですが、同じように年賀状を出している人はみたことがないそうです。

実際のところ、僕も年賀状は出しませんし、2000年代終わりか2010年代はじめ頃であっても、紙に印刷した郵便というアナログ的なコミュニケーションを真似しようとは思わなかったのは事実です。

ただ、大事なことは、アナログかデジタルかはおいて、自分なりに考えた(効果があると確信できる)方法を愚直にやり続ける、という行為の重要性です。
少なくとも祐川さんは、その方法を有効であると確信し、数年にわたってやり続けてきた。その結果、彼女なりの有効な人脈を作り上げてきたわけです。年末の忙しい時期に、多大なコストと時間をかけて行う手法に、即効性はないかもしれない。少なくとも新陳代謝に一年かかるやり方は現代的ではない気がしますが、それでもやはり継続は力なのです。

つまり、この年賀状を2000人に出す、というやり方そのものを真似することが重要なのではなく、コレと決めたやり方を根気よく続ける努力が大事だということです。

この年賀状2000枚を出すやり方を模倣した人が結局いたのかどうかは知りませんが、なにかの達人にその極意を尋ねる人は古今東西結構多いはずなれど、達人が辿り着いた極意とは案外簡単でシンプルなモノであると同時に、いや、それだけに、真似し難いものであるのかもしれません。

継続は力なり、なんです

世界中の人々に愛されている「アラビアンナイト」。日本訳では千夜一夜物語として紹介されたように、こじれにこじれた王様の心を癒すために毎晩続けられた、一人の女性の夜伽の物語をまとめた、という体裁で作られています。

一つ一つの物語が悠久の時を超えて、いまだに そして様々な言語で楽しまれていることでわかるように、その完成度の高さは数多あるエンターテイメントを寄せ付けないものです。しかしそれでも、この夜伽の物語は少なくとも数百紡がれた。手間と時間をかけて、誠意を示したからこそ、こじれた王の心はほぐされたのです。

アラビアンナイトでさえも相当な時間を費やさなくては王の心に届かなかった。それならば、潜在的に存在するであろうお客様のために、我々も相応の時間と手間をかけるべきではありませんか。

繰り返しますが、継続は力なり、です。即効性を求めすぎたり、根気が続かずすぐ投げ出したりするのは傲慢極まりない行為です。

そのことを心に刻み、達人からいただいたシンプルな極意に、騙されたと思って取り組んでみましょう。

それが真のブランディングへの第一歩だと思うのです。

画像: コンテンツマーケティングの要諦は、「継続は力なり」。成果を急ぐのもいいけれど、そのことをゆめ忘れるべからず

小川 浩 | hiro ogawa
株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。
マレーシア、シンガポール、香港など東南アジアを舞台に起業後、一貫して先進的なインターネットビジネスの開発を手がけ、現在に至る。

ヴィジョナリー として『アップルとグーグル』『Web2.0Book』『仕事で使える!Facebook超入門』『ソーシャルメディアマーケティング』『ソーシャルメディア維新』(オガワカズヒロ共著)など20冊を超える著書あり。

This article is a sponsored article by
''.