今後どうしたらいいのか?
釜田さんは、個人情報を軸とした「データドリブン」から、コンテンツに対して人々が感じる価値観や興味関心を軸に展開する「コンテンツドリブン」への移行こそが、次世代の事業展開の突破口になると言います。
これを実直に行って成長してきた企業としてNetflixを例に解説していただきました。
DVDレンタルサービスからストリーミング配信企業へ
Netflixは元々オンラインDVDレンタル会社でした。いまのようなストリーミング配信ではなく、Webで手続きをして自宅にDVDを送付するサービスです。やがて現在の形態に移行していきますが、既存作品の配信だけでなく、オリジナルコンテンツの制作にも力を入れはじめます。
Netflix制作の『HOUSE of CARDS』(邦題:ハウス・オブ・カード 野望への階段)。本作の原型はイギリスのテレビドラマにあるのですが、デヴィッド・フィンチャー監督、俳優ケヴィン・スペイシーを製作陣に招き、世界的な大ヒットを記録しました。この作品が制作された背景にこそ、今後の我々の動きを決めるヒントがありました。
当時から同社は、ユーザーの評価を基にオススメ作品を提示するレコメンド機能などを展開しており、どのコンテンツに人気が集まっているのか?次に何を見るのか?といった情報を持っていました。
そこで注目したのが、デヴィッド・フィンチャー監督による作品とケヴィン・スペイシー出演作品におけるユーザーのエンゲージメント率の高さです。そこにテレビドラマとしても人気のあった原作を組み合わせることで、多数のユーザーに響く作品を作り上げる──。
ユーザーの興味関心・価値観の指標を元にコンテンツを制作して配信する、これがコンテンツドリブンの縮図なのだと釜田さんは言います。
ペルソナは不要?
これまでマーケティングを行うためには、年齢・性別・趣味・年収・居住地域といった個人情報を組み合わせ、訴求したいユーザーのペルソナを作ることが第一でした。しかし、Netflixの例を見ても分かる通り、ここにはそうした個人情報は介入していません。あくまでも指標となるコンテンツにユーザーがどれだけ接触したかといった情報のみです。
たとえば「35歳・男性」でペルソナを作ったとしても、住む地域・国が変われば趣味趣向もまったく変わるため、世界をターゲットに展開するNetflixにとっては意味がありません。むしろ、コンテンツを煮詰めていき、そこに価値観を感じてもらうことこそが重要です。
このコンテンツドリブンこそ、我々がこれからの事業として行うべき形である、と釜田さんは言います。「とはいえ、どうしてもペルソナを……となってしまいがちですけどね」と笑いながら、アマナデザインとしてはすでにコンテンツドリブンを実現すべく事業展開していると紹介してくださいました。
コンテンツの資産化が重要
個人情報から動向を推察するのではなく、コンテンツへの興味関心といった消費動向を元に事業展開していくコンテンツドリブン。そこで必要になるのは一にも二にもまずはコンテンツです。
そのコンテンツ制作・展開でアマナデザインが行っているのが、3つの「C」だといいます。
・Curation(キュレーション)
信頼できる雑誌メディアなど、外部パブリッシャーの良質なコンテンツを集めて多数展開することで、潜在顧客や見込み顧客に対して広くブランドを認知させる。
・Collaboration(コラボーレーション)
ブランド目線はそのままに外部専門家による客観的視点を加えたコンテンツ制作を行い、見込み・検討顧客とのエンゲージメントを強化していく。
・Creation(クリエーション)
ブランドにもっとも近い視点で制作を行うことで、検討顧客や購入顧客に対してより深く製品を認知させる。
上記3つの「C」を組み合わせて人々の価値観や感性に響くコンテンツを制作する。そして、ターゲットの興味やブランドの提供サービスにつながるキーワードを書き出したコンテンツマップを作り、何がどこに響いたのか、どこを拡張していけば良いかを管理・運用していく。
そうしてPDCAを地道に回していくと「コンテンツが資産化していく」と釜田さんは言います。
これまでは個人情報を元にペルソナを作成し、広告展開を重ねてのデジタルコミュニケーションが一般的でしたが、コンテンツが資産化すれば、そうした広告展開をせずとも人は集まってくる──。
釜田さんは「トラフィックのきっかけ作りとして広告展開は必要です」と付け加えながらも、人々の感性に響くコンテンツ作り、そしてそれを基軸とした事業展開こそが次世代のデジタルコミュニケーションの姿であると結びました。
釜田さんのお話から、いかにコンテンツが重要になるかが理解できました。しかし、そのコンテンツを適切に発信する場がなければ意味がありません。
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